中国政府による世論操作の一端がこのほど、中国国有通信最大手の系列企業で働いていた元従業員の証言で明らかになった。元従業員によると、中国の現政権は国民の携帯電話を広範囲にモニタリングし、「国にとってデリケート」な言葉を検閲しているという。
中国政府による世論操作の一端を暴露したのは、国有企業で国内最大手の携帯電話事業者である「中国移動通信(チャイナ・モバイル)」のオンラインサービスを担う系列企業「中移在線服務」に勤めていた李さん(仮名)。最近、中国の信教の自由に関する情報を扱うニュースサイト「ビター・ウィンター」(英語)に語った。李さんは、中国政府が携帯電話の通話やSNSなどのメッセージをモニタリングしているため、「中国にはプライバシーがまったくない」と言う。
「誰かが共産党にとって好ましくないと思われる言葉を使った場合、その人は処罰されます。『嫌がらせを取り締まるため』という口実で、誰も彼もがモニタリングされ、管理されているのです」
李さんは退職前、同社で「検閲官」として働いていたが、約500人の同僚と共に、顧客の通話やメールをモニタリングしていたという。
この監視プログラムは、香港、マカオ、台湾を除く、中国国内の全31の省・直轄市・自治区に在住している中国移動通信の顧客全員を対象としており、政治や宗教的信条に関わるあらゆる情報を自動的に検出できるようになっている。
李さんによると、中国移動通信で「検閲官」として働く従業員は、共産党に批判的な言葉や、国家指導者に好ましくない「有害な」情報が検出されると、それを徹底的に調べるよう割り当てられるという。
「誰かが不注意でデリケートな情報を一つでも見逃した場合、月給や年末ボーナスが減給されます。私は通常、月に1万件余りの情報を処理しなければなりませんでした。ミスをすることは避けられませんでした。少なくとも年に1、2回は」
「全能なる神(または全能神)」や「法輪功」など、宗教関連の言葉やフレーズは要注意の言葉と見なされている。また共産党を示す「党」という単語や、中国共産党からの退党、中国共産主義青年団(共青団)からの退団などを示唆する言葉や会話は、念入りにモニタリングされ、コントロールされているという。
「中国共産党に好ましくないと思われるものにはどれも、『政治的』というレッテルが貼られます」と李さんは言う。「例えば、中国共産党が法輪功実践者から臓器を搾取していることを示唆するメッセージを傍受するために、緊急措置が取られます。情報のリークを防ぐためです」
「通話やショートメール、または微信(ウィーチャット、中国のチャットアプリ)などのSNSのメッセージでデリケートな言葉が検出された場合、システムが自動的に情報を傍受し、顧客のサービスは即座に無効になり、その人たちは電話をかけたり、メッセージを送信したりできなくなります。顧客がサービスを再度有効にするには、中国移動通信のサービスセンターにまで身元証明書を持参して行き、そうしたデリケートな情報を二度と公表しないことを約束する覚書きを書かなければなりません」
特に「不適切」と見られる発言をした場合、より厳しい罰則が課される恐れもある。今年5月には、福建省南東部に住む男性が国境で取り調べを受け、国境警備隊にパスポートを破られる出来事があった。警備隊は、その男性が過去に共産党や国家指導者に批判的な発言をしていたため、国外旅行を禁じたとされている。