名古屋YWCAは3日、1日から名古屋市などで開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の展示「表現の不自由展・その後」について、抗議や脅迫の電話などが多数寄せられた「平和の少女像」の展示継続を求める要望書を、同祭実行委員会会長の大村秀章愛知県知事と芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介氏宛てに送った。
少女像は慰安婦像をモチーフにした作品で、名古屋YWCAは「東アジアの友好と平和を願う立場」から少女像の展示を支持すると表明。少女像は「再び、女性と子どもが蹂躙(じゅうりん)されない世界の実現への祈りが込められたもの」としている。
また展示自体も、検閲を禁止する憲法21条の精神が生かされた「意義深いもの」だとし、開催期間中、静かに鑑賞できる環境が守られるよう求めた。
同展の少女像をめぐっては、河村たかし名古屋市長が1日、問題視する発言をし、菅義偉官房長官も2日の会見で「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」などと言及していた。同祭は文化庁の助成事業で、補助金交付の決定はこれからだったという。
こうしたことを受け、津田氏は2日夕、会見を開催。テロ予告や脅迫と取れる抗議の電話やメールが事務局に来ているとし、少女像の撤去または同展の中止を検討すると表明。翌3日夕には、大村氏が臨時の会見で同展の中止を発表。津田氏も会見を開き、「想定を超える事態が起こった」と説明し、展示中止を謝罪した。
一方、同展実行委員会のメンバーらは同日、展示が大村、津田両氏の判断により一方的に中止されたとし、抗議する文章を発表した。抗議が殺到し、事務局が対応に追われたことに理解を示す一方、「16組の参加作家のみなさん、そして企画趣旨に理解を示してくださる観客のみなさんに対する責任を、どのように考えての判断なのでしょうか」と、決定に疑問を投げ掛けた。
また一方的な中止決定は、「疑義があれば誠実に協議して解決を図るという契約書の趣旨にも反する」と指摘。「何より、圧力によって人々の目の前から消された表現を集めて現代日本の表現の不自由状況を考えるという企画を、その主催者が自ら弾圧するということは、歴史的暴挙と言わざるを得ません。戦後日本最大の検閲事件となるでしょう」と非難した。展示中止に対しては、法的対抗手段も検討しているという。