最初の海外ツーリングのオーストラリアが非常に良かったので、2度目は隣国ニュージーランドを北から南へほぼ縦断することにした。
北島のオークランドへ入りバスで最北端へ出て走り始めた。海に出ればヨットが浮かぶエメラルドグリーンの水面がすばらしくきれいだ。牧草地の緑の草原も鮮やかだ。南下して行くなかで、北島の中央にあるタウポ湖で見た夕焼けは、湖に映って空も地も真っ赤に見えて荘厳であった。
大抵の町外れにはRV用のキャンプ場が用意されていて、キッチンなども整備されて快適だ。
しかしタウポ湖の南に広がる荒涼とした大地では雨が降り出し、夜になって着いた町は何か様子が違う。食料を買おうにも店も宿も何もない。この国は町に行けば食料品店も普通にあるので食料は持っていなかったが、持っていても雨の中でのテント泊はつらい。雨の中一件の家の玄関を叩いてみた。そこは軍の町で、その家の方は日本が好きで、冷えたろうと言って熱燗の日本酒も出してくれ、歓迎してくれた。
また北島の最南端でも、キャンプ場がなく海岸の砂浜で野宿しようとテントを張っていいか尋ねた人が後で戻ってきて、こんなところに泊まるならうちへ来なさいと言ってくれた。そんな親切な人との出会いは感謝なことである。
南島へ渡ると景色はさらに奇麗だ。その中でも特別に素晴らしかったのはテカポという名の湖であった。この湖の風景を初めて知ったのは中学生のころ見た新聞の日曜版だった。湖畔の教会の景色がとてもきれいで、いつか行ってみたいと思ったが、いつしかその場所のことは忘れていた。
そして10年以上経ち、ここの詳しい地図を見ているうち、その風景がふと思い出された。あれは南島中央にあるテカポ湖の景色ではないか。そして期待しながら、最後のなだらかな丘を越えた。視界が開けると、森の向こうに真っ青な水が横たわっていた。
「何なんだ、これは」というのが見たその瞬間口から出て来たことばだった。湖に沿って走りながら、信じられないほどの水の青さに涙が出そうなくらい感動した。湖畔から見る教会のある風景は、期待していた以上のものであった。
石積の小さな教会の礼拝堂に入ると、正面にある窓から湖とその向こうのサザンアルプスが見え、まるで額の中の絵のように美しい。教会の名は「よき羊飼いの教会」。夜は満天の星空が印象的だった。
この国には人間より羊の数が多いというほど羊がいっぱいいる。日本ではあまりなじみのないこの動物は、人間がいなければ滅んでいただろうと言われるような、自分を守るすべを持たない動物だ。牧場脇を走ると、その音に驚いた1匹が走り出すと分けも分からず周りの羊も走り出す。道路に迷いでた羊は、脇にどけばいいのにいつまでも前を走って逃げて行く。そんな羊たちの様子を見ると、人間も主という飼い主がいなければ先のことが分からないという、聖書のたとえの意味がよく分かる。
そして南島のメイン、サザンアルプスへ。感謝だったのは、あまり晴れる日がないというこの国最高峰のマウントクックが、向かう道は曇り、帰りも雨だったのが、滞在した時間だけ晴れたことだ。
最後に訪れた南西の端フィヨルドランドでは、雪を抱いた山々を望みながら氷河の解けた緑色をした湖が点在する中をトレッキングした。
世界中からハイカーやサイクリストがやってくるアウトドアライフいっぱいのこの国で、神様の創造した自然をいっぱいに味わったのである。
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