末日聖徒イエス・キリスト教会(通称・モルモン教)のトップであるラッセル・M・ネルソン第17代大管長は16日、「モルモン教」や「LDS教会」といった呼称を今後は使用しないとする声明(英語)を発表した。これについて、南部バプテスト神学校(米ケンタッキー州)のアルバート・モーラー・ジュニア学長は、クリスチャン、特に福音派が知っておくべき神学的に重要な事項があると述べている。
一方、この呼称変更が実際に実施されるかは疑問視されている。「モルモン・タバナクル合唱団」のように影響を受ける可能性のある著名団体が多数存在するためだ。
しかしネルソン氏は声明で、「主はご自身の教会の名称の重要性を私の思いのうちに明らかにされました。『末日聖徒イエス・キリスト教会』のことです。私たちには、自分自身を主のご意志と調和させる義務があります。ここ数週間、さまざまな教会指導者や部署がそのために必要な措置を講じています」と述べている。
新ガイドライン(英語)によると、正式名称は「末日聖徒イエス・キリスト教会」のままで、略称が必要とされる場合、単に「教会」(英語では the Church と大文字を使用)、または「イエス・キリストの教会」という表現が奨励されている。また「回復されたイエス・キリストの教会」という表現も正確であるとされ、奨励されている。
一方、これまで長く使われてきた「モルモン教」や「モルモン教会」といった通称、また「LDS」(末日聖徒=Latter-day Saints の頭文字)や「LDS教会」「末日聖徒教会」などの略称は使用を中止する。
モーラー氏は20日、自身が投稿するポッドキャスト・メッセージ「ブリーフィング」(英語)で、今回の変更について言及。単に一部の呼称の使用を中止しただけではなく、モルモン教が教義における「真理の主張」をしていると指摘する。
「モルモン教」という短い表現ではなく、フルネームで呼ぶべきだと訴えることにより、「他のキリスト教会はどれも真の教会ではない」という、モルモン教の信条を再確認しているとモーラー氏は説く。
「一般的にモルモン教として知られる末日聖徒イエス・キリスト教会の正式な教義では、モルモン教会は真の教会が回復したものだとされている。真の教会は、弟子の時代(厳密には使徒時代)に地上から消滅し、その状態は19世紀にジョセフ・スミス(モルモン教の教祖)が米国に現れるまで続いたというものです。
末日聖徒イエス・キリスト教会の英語表記に、定冠詞が使われていることに注目してください。この名称は、イエス・キリストと共にあるということを明確にうたう表現ですが、しかしこれはまた、使徒時代からジョセフ・スミスまでの教会には、非連続性や絶対的な距離があると明確に主張するものなのです。
大管長が、モルモン教はもはやモルモン教と呼ばれなくなると言う場合、そこには学術的な命名法における問題以上のものがあるのです。
それは単なる名称ではなく、(教義上の)主張だからです。それは(モルモン教の教義における)真理の主張なのです。ですから福音派の信者は、そのことをはっきりと認識しておかなければなりません」
この点についてネルソン氏は、声明発表後にカナダのモントリオールで行われたモルモン教の集会で、自身の発言は「名称の変更」というよりは「名称の修正」だと述べている。
「マーケティング担当者の中には、成功することを期待して名称を変更する人がいます。しかし私たちは、過去の時代に忍び込んだ誤りを正しているのです」
なお、ジョセフ・スミスが19世紀初頭に創始したモルモン教は、聖書の他に『モルモン書』などを独自の聖典として持ち、三位一体を否定するなど、正当なキリスト教ではない異端とされている。