米国のサウスウェスタン・バプテスト神学校(SWBTS、テキサス州フォートワース)の理事会は5月30日、約1週間前に学長を辞任し、名誉学長として退いたペイジ・パターソン氏を解任し、すべての関係を絶ったと発表した。
パターソン氏は過去に、女性が夫から虐待を受けても離婚する根拠にはならないなどと述べていたことが問題視され、22日に学長を辞任。大学側は当初、パターソン氏を名誉学長に任命し、7月に完成予定の福祉厚生施設への入居などを用意していた。しかし、性的暴行被害者に対するパターソン氏の在職中の対処をめぐって、辞任から1週間余りでさらに厳しい措置が取られることになった。
学校側は、30日の理事会で提示された新たな情報について具体的に明らかにしていないが、声明(英語)では「(パターソン氏の言動は)SWBTSの聖書的価値観と矛盾しています」と指摘している。
「理事会に提出された詳細な情報に基づき、速やかな行動が求められ、定期会合まで先送りにできないと判断したため、理事会執行委員会はペイジ・パターソン氏を解任し、5月22〜23日の理事会で(パターソン氏に)与えることを決めていたすべての恩恵や権限、特権などを直ちにかつ効果的に取り消すことを満場一致で決議しました。その中には誉会学長の肩書や、神学者のための福利厚生施設であるバプテスト・ヘリティッジ・センターへの入居の招待も含まれます」
学校側は、ジェフリー・ビンガム暫定学長が、虐待の犠牲者を傷つける可能性のある言動を強く非難していると強調している。
「SWBTSはあらゆる形態の虐待に反対し、虐待で傷ついた個人と共に悲しみます。ビンガム氏は本日、SWBTSがあらゆる虐待行為や虐待を可能にするすべての行為を非難することを言明し、虐待被害者を保護し、虐待を受けやすい人々を守ることを約束しました。加えてビンガム氏は、虐待の影響を受けたすべての個人の癒やしを祈るためにキリストの御体と力を合わせるよう、SWBTS関係者に呼び掛けました」
パターソン氏の発言をめぐっては、聖書カウンセラー認定協会が29日、サウスウェスタン・バプテスト神学校を会場にして10月に開催を予定していた年次会合を中止すると発表。すでに新会場を手配済みであることを明らかにするなどしている。
パターソン氏は2000年に行った説教で、虐待の危険性があるため一時的な別居を勧めたケースはあったものの、夫婦間で虐待があっても一度も離婚を勧めたことはないと述べていた。また03年には、性的暴行を受けたと訴える女子学生に対し、警察に通報しないよう勧めたとも伝えられている。女子学生はキャンパス内で性的暴行を受けたと訴えたが、当時学長だったパターソン氏は、警察に通報せずにただ加害者を赦(ゆる)すよう勧めたという。
サウスウェスタン・バプテスト神学校は、米プロテスタント最大教派である南部バプテスト連盟(SBC)認可の神学校の1つで、在学生が3千人を超える世界で最も大きな神学校の1つ。パターソン氏は1998〜99年にSBCの議長も務めている。