米アイオワ州議会に、公立学校が選択科目として聖書を教えることを容認または要求する議案が提出された。提出したのは、同州のディーン・フィッシャー議員ら共和党の議員12人。議案は州教育省に対し、ヘブル語の旧約聖書とギリシャ語の新約聖書を集中的に学ぶ選択科目を公立高校に設置するために、必要となる教材や教師研修の準備をするよう求めるもの。
同州の有力紙「デモインレジスター」(英語)によると、フィッシャー氏は「私は基本的に、聖書が歴史や文化に影響を与えたという見地から、聖書を学ぶ機会を生徒たちに与えたいのです」とコメント。米キリスト教団体「ファミリー・リーダー」の広報担当ドゥルー・ザーン氏も「文学的、文化的重要性もさることながら、聖書は米国人の良心に何よりも必要な基本となるものです。これがないと、米国の一致は破綻をきたしてしまいます」と議案を支持する立場を示した。同州シーダーラピッズで牧会するデーブ・ドイル牧師は「確かに、わが国にはさまざまな信仰がありますが、聖書は建国の一部になっている信仰です」と語る。
しかし、保護者の中には懸念する人々もいる。ユダヤ人の母親であるナオミ・ホームリガウゼンさんは、米ABCニュース(英語)に「米国憲法修正第1条には、教会と国家の分離が意図的に組み込まれています。ですから公教育の中に聖書を入れることは、合法的でないと思われます。(議案は)あえて検討するべきことではありません」と語った。
無神論者たちも、公立学校における聖書教育には反対している。無神論者のNPO団体「信教からの自由連盟」(FFRF)は昨年、ニュージャージー州マーサー郡の大多数の学校が、1939年から聖書の選択科目を設置していたことに対する訴訟を起こした。同連盟は訴状で、「聖書教育は、1つの宗教を優遇することになり、公立学校の宗教問題をひどく混乱させ、無宗教者や、非キリスト教徒の親や生徒たち一人一人の良心を傷つけている」と訴えていた。しかし、同州の連邦地方裁は訴えを棄却。デイビッド・フェイバー裁判官は「最高裁の法理学は、公立学校において聖書が教えられたり学ばれたりすることに対して、絶対的な制約などは課していない」と述べていた。
米国内の公立学校で聖書の授業が認められているのは、これまでのところ、アリゾナ、アーカンサス、ジョージア、オクラホマ、テネシー、テキサス、ケンタッキーの各州。
この内、ケンタッキー州は昨年6月に法律が成立したばかり。共和党議員でキリスト教徒である同州のマット・ベビン知事は法案に署名した際、「学校で学ぶ生徒に対し、聖書の授業を受けることを選択肢に入れたくないというのは、とんでもないことです。これを受け入れる州とそうでない州がある理由が分かりません。なぜ国家として承認できないのでしょうか」などと語っていた。