日本におけるプロテスタントの源流の1つ、「熊本バンド」の結成を記念する早天祈祷会が1月30日、熊本市の花岡山山頂で開かれた。朝6時半から始まった祈祷会には、一般の信者やキリスト教系の高校に通う生徒などが集まり、賛美と祈りをささげ、当時の生徒たちが誓った「奉教趣意書」を朗読するなどした。
「札幌バンド」「横浜バンド」と並んで、明治期のプロテスタントの源流の1つとなった熊本バンド。1876年、米国人教師L・L・ジェーンズからキリスト教の教えを受けた熊本洋学校の生徒35人が花岡山で集会を開き、奉教趣意書を読み上げ、キリスト教精神を日本に広めようと誓い合ったことで始まった。「バンド」とは、こうした誓いによって結ばれた人たちを称した呼び名。
当時のメンバーには、小崎弘道(日本基督教連盟会長、第2代同志社総長、日本基督教団霊南坂教会創設者)、下村孝太郎(第6代同総長)、海老名弾正(第8代同総長)ら、そうそうたる名が並ぶ。その大部分は創立直後の同志社に転校し、同志社のみならず、日本の近代市民社会形成に大きな貢献を果たした。現在の熊本YMCAも、熊本バンドの精神を受け継いでいる。
早天祈祷会は毎年1月30日に行われる恒例の行事で、今年で142周年記念となる。祈祷会では、たき火を囲みながら賛美をし、ヨハネによる福音書第10章1~16節が読み上げられた。その後、九州学院高校とルーテル学院中学・高校の生徒が練習を重ねてきた賛美をささげた。
続いて、熊本大学YMCA花陵会の鹿田純一さんが、奉教趣意書を原文のまま朗読。その口語訳である「キリスト教を信じる宣言文」に記された次の3つの約束を、九州学院高校の桑原慎太郎さんが読み上げた。
- キリスト教を信じる者は、お互いに兄弟としての交わりをもち、生活全般にわたって、互いに戒めあい忠告しあいながら、良い行いを実行しなければならない。
- いったん、キリスト教の信仰を持ちながら、信仰にふさわしい生活ができない者は、神をあざむくことになる。また、自分自身の心をもあざむくことになる。こうした者は、必ずや神の罰を受けることを知らなければならない。
- 今日、我が国の多くは、キリスト教を拒否している。それ故に我らの内、たとえ一人でもキリスト教をすてる者は、世間の物笑いになるだけでなく、我らのせっかくの決意をもふみにじり、実行不可能にしてしまう。ともども、努力しようではないか。
その後、「わたしは世の光である。わたしに従う者は暗闇の中を歩かず、命の光を持つ」(ヨハネ8:12)の聖書箇所を通して、同志社大学キリスト教文化センターの横井和彦所長が、「150周年、200周年に向けて」と題して奨励を行った。
今年は2年に一度行われることになっている講演会が、祈祷会前日に熊本バンドゆかりの熊本草葉町教会(熊本市)で行われた。この講演会では、横井氏が「同志社の基礎、精神」をテーマに講演した。