「マザー・テレサ写真展」(主催:マザー・テレサ記念館)が上智大学四谷キャンパス(東京都千代田区)で開催されている。マザー・テレサの故郷、東欧マケドニアの首都スコピエにあるマザー・テレサ記念館が所蔵する写真のほか、その活動を撮影した写真集「祈り」を手掛けた百瀬恒彦氏の写真なども展示され、その生涯をたどることができる。
初日となる11月28日にはオープニングセレモニーが行われ、上智大学学長の曄道佳明(てるみち・よしあき)氏、駐日マケドニア共和国大使のアンドリヤナ・ツヴェトコビッチ氏、マザー・テレサ記念館館長のレナタ・クテラ・デュフコスカ氏、カトリック宇部教会主任司祭の片柳弘史氏、そしてピースピースプロジェクト代表理事の多田多延子(たえこ)氏が登壇した。
開会のあいさつでツヴェトコビッチ氏は次のように語った。
「キリスト教徒の少ない日本でカトリック修道女のマザー・テレサがこんなにも人気が高いのは、日本人にとって『お母さん』が優しさの象徴であり、それをマザー・テレサが体現しているからではないでしょうか」
マザー・テレサ(1910~97)は、アルバニア人の父親とルーマニア人の母親のもと、3人きょうだいの末っ子として生まれた。本名はアグネス・ゴンジャ・ボヤジュで、「ゴンジャ」はアルバニア語で「花のつぼみ」の意味。両親は、イスラム教徒の多いアルバニア人には珍しいカトリック信徒で、マザー・テレサも生まれた翌日にスコピエの「イエスのみ心教会」で幼児洗礼を受けている(この教会の跡地にマザー・テレサ記念館が建てられた)。
実業家でアルバニア独立運動の闘士だった父ニコラは、マザー・テレサが7歳の時に亡くなり、その後は母ドラナが3人の子を女手ひとつで育てた。ドラナは、「神を愛することは、貧しい人に奉仕すること」という考えの持ち主で、常に神をあがめ、いつも貧しい人に手を差し伸べていたという。
マザー・テレサは12歳の時にはすでに、将来、インドで修道女として働きたいと願い、18歳で故郷を離れ、アイルランドのロレト修道女会に入る。翌年、インドに向かったが、「アグネス・ゴンジャ・ボヤジュのスコピエにおける最後の写真」と記された18歳のマザー・テレサのポートレートは、その時に撮られたものだ。
インド東部コルカタを拠点に活動を開始し、50年代初めに「神の愛の宣教者会」を設立。その後、「死を待つ人々の家」を開設したほか、数多くの療養施設や学校などを運営し、宗教・人種の壁を越えたその無償の働きは世界に大きな影響を与えた。79年にはノーベル平和賞を受賞。その際、「世界平和のために私たちはどんなことをしたらいいですか」との質問に、「家に帰って家族を愛してあげてください」と答えたことは今も語り継がれている。
「神は物質的なものを他の人々と分かちあうためにくれるのであり、自分で独り占めするためではありません」など、マザー・テレサが残した言葉の数々も紹介されている。昨年9月4日にローマ教皇より「聖人」と宣言されたが、その列聖式の様子までが展示されている。
マザー・テレサは1980年代に3度来日しており、そのたびに上智大学で講演を行っている。最初に訪れた81年には、「ビューティフルなことって何?」と題して講演し、約1300人の学生・教職員に深い感動を残した。
同展は、今年4月にツヴェトコビッチ氏が同大を訪問したことをきっかけに実現した。2014年に開設された東京のマケドニア共和国大使館が行う最初の本格的なイベントとなる。
「マザー・テレサ写真展」は8日(金)まで。上智大学四谷キャンパス2号館1階エントランススペースと、カトリックセンター内にて午前10時~午後5時まで。入場無料。