大地震で被災した教会に代えて「紙の教会」や「紙のカテドラル」などを設計したことで知られる建築家の坂(ばん)茂氏(60)に、「マザー・テレサ賞」が贈られることが決まった。日本人の受賞は初めてで、建築家が受賞するのも今回が初めてだという。国内各紙が13日に伝えた。
坂氏は、1995年の阪神・淡路大震災で焼失したカトリック鷹取教会(現カトリックたかとり教会)のために、紙管を使った仮設の聖堂「紙の教会」を設計。さらに2011年には、ニュージーランドのカンタベリー地震で被災したクライストチャーチ大聖堂のために、仮設の「紙のカテドラル」を設計するなどした。
マザー・テレサ賞は05年、平和や社会正義の促進を目指す個人・団体を表彰する賞として創設された。正式名称は「社会正義のためのマザー・テレサ記念国際賞」で、ハーモニー財団(インド)が主催する。これまでに、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんやダライ・ラマ14世、国境なき医師団などが受賞している。
例年、複数の個人・団体が受賞しており、今年は坂氏の他に、イスラム過激派に昨年誘拐され、今年9月に解放されたインド人神父のトーマス・ウズナリル氏や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)にも同賞が贈られることが報道されている。
受賞の知らせを受け、坂氏は産経新聞に「建築家として初めて受賞したことを光栄に思う。建築でも人道支援を行えるのだと、約20年の活動が認められたのではないか。こうした活動には若い建築家たちも興味を抱き始めているので、動きは全世界に広がっていくだろう」と語った。
坂氏は、毎日デザイン賞大賞(1995年)や日本建築家協会(JIA)新人賞(97年)、日本建築学会賞(2009年)など、国内外で多数の受賞歴を持ち、14年には建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞している。また今月2日には、科学技術や学術・芸術分野で優れた業績を挙げた人に贈られる紫綬(しじゅう)褒章にも選ばれた。
マザー・テレサ賞の授賞式は12月10日、ハーモニー財団の本部があるインド西部の都市ムンバイ(旧ボンベイ)で行われる。