米国に拠点を置くキリスト教人道団体「ワールドヘルプ」が、身を潜めて信仰を守る北朝鮮のキリスト教信徒に、新品の聖書5万冊を年内に届けようと寄付を募っている。
北朝鮮は16年連続で、キリスト教徒への迫害が最も激しい国となっている。しかしその一方で、密かに信仰を守る地下教会が増え、聖書に対する需要は高いという。ワールドヘルプのバーノン・ブリューワー会長は最近、北朝鮮国境まで足を運び、聖書を持ち込もうとしている宣教師たちに会ったことを明かし、次のように語った。
「いくら聖書を印刷してあの国に持ち込んでも、まだまだ足りていないのが現状です。需要に追い付いていないのです。キリスト教文書は言わずもがな、聖書そのものさえ持っていない信徒がいるのです。ほんのわずかの聖句を暗唱したり、紙切れに走り書きされた新約聖書の数章を持っていたりするかもしれませんが、彼らにはもっと御言葉に触れたいという飢え渇きがあるのです」
「北朝鮮の地下教会は、神の言葉を必死に求めています。彼らが私に求めていることは、ただもっと聖書が欲しいということです。聖書を1冊手にすることが何を意味するか、彼らはもちろん知っています。信仰者は監獄に連れて行かれるのですから。でもそのリスクを冒してまでも聖書が欲しいのです。聖書のページの中にある神様の約束を読みたいのです」
ワールドヘルプ(英語)によると、10ドル(約1140円)の寄付で北朝鮮に聖書1冊を届けることができる。一方、北朝鮮の多くの地下教会では、1冊の聖書を何人かで分かち合っているため、10ドルで5人ぐらいに御言葉が行き渡ることになる。
「私たちは、キリストにある兄弟姉妹にただ苦しみを負わせておくわけにはいきません。迫害を止めることはできないかもしれませんが、彼らがイエス・キリストと共に歩んでいく手助けをすることはできます」
北朝鮮のキリスト教徒にどのように聖書を配布するかは、安全上の理由から具体的には明かせない。しかし、ワールドヘルプの協力団体はこれまでも確実に、北朝鮮に聖書を運び入れてきたという。
ブリューワー氏によると、北朝鮮の強制労働収容所に入れられたキリスト教徒は7万人に上ると推計されている。収容所では、長期間にわたる労働を強いられ、ひどい拷問にもかけられる。
「ただ聖書を持っているだけ、また賛美歌を歌ったり、祈ったりしただけで、最高15年の強制労働刑が科せられます。彼らは拷問に苦しめられます。北朝鮮にいる全キリスト教徒のほぼ4分の1が、いわば監獄で拷問を受けているのです」
15年の強制労働刑となった場合、多くはひどい拷問のために3年以内に死亡しており、実際には死刑に等しいという。
「キリスト教徒の中には、収容所に入って出られなくなる者もいます。飢えを強いられ、肉体的にも精神的にも打たれ、拷問を受けるのです。1日13時間の労働を強制されます。英国に拠点を置く迫害監視団体『世界キリスト教連帯』(CSW)の最近の報告によると、収容所のキリスト教徒が危険な薬物実験に使われていることさえあるといいます。実験用のラットと同様に扱われているのです。若い男子は体を切断され、女子は次々に暴行されているのです」
「体に拷問を受けた傷を残し、昏睡(こんすい)状態で米国に帰国したオットー・ワームビアさんもそうでした。北朝鮮にいるキリストに連なる兄弟姉妹のうち7万人がまさに今、こうした迫害を受けています」
北朝鮮で聖書を所有したり、礼拝したりすることは違法だが、危険を冒してでもイエス・キリストの宣教をすべきだ、とブリューワー氏は言う。「神は、ワールドヘルプに、あなたに、そして私にチャレンジしているのだと思います。北朝鮮のキリスト教徒に対して、何らかの応答をするようにと」