クリスチャンの服部良一氏(67、元)が大阪9区から社民党公認候補として出馬した。社民党から立候補するキリスト者は他に、東京21区から出馬した日本基督教団牧師の小糸健介氏がいる。
社民党は、1996年に改称する前は日本社会党だったが、社会党には歴史的に有名なクリスチャンがいる。その初代委員長で第46代内閣総理大臣(1947~48年)の片山哲(てつ、1887~1978)が日本基督教団富士見町教会に所属するクリスチャンだった。また、「十字架委員長」と呼ばれた河上丈太郎(1889~1965)、その長男である河上民雄(1925~2012)も同教団銀座教会会員。河上民雄の秘書でその地盤を受け継いだ土肥隆一(1939~2016)は、東京神学大学出身の同教団和田山地の塩伝道所の牧師だ。11代委員長の田邊誠(1922~2005)もクリスチャン。そして、「キリスト新聞」の創始者である賀川豊彦(1888~1960)も日本社会党の結成に参画した。
混戦が予想される今回の衆議院議員選挙。9月25日に安倍晋三首相が突然、衆院解散の意向を表明したことから始まり、小池百合子東京都知事率いる希望の党が旗揚げしただけでなく、野党第一党だった民進党が事実上分裂して希望の党へ合流し、そこから「排除」されたリベラル系議員が立憲民主党を結成するなど、過去に例を見ないほど混乱している。
服部氏は最初、大阪3区(大正区、住之江区、住吉区、西成区)の社民党公認候補に内定していたが、社民党が共産党と選挙協力を行うため、大阪9区に選挙区が変更された。大阪3区から立候補する共産党の渡部結(わたなべ・ゆい)氏(36、新)を社民党が推薦し、大阪9区に移った服部氏を共産党が推薦する。服部氏は他に立憲民主党、自由党、緑の党、新社会党からの推薦も受け、野党共闘となる。
大阪9区(池田市、茨木市、箕面市、豊能郡)には、服部氏の他、自民党の原田憲治氏(66、前、3期)、維新の党の足立康史氏(49、前【復】、2期)が立候補している。前回の第47回衆議院議員総選挙では原田氏が公明党の推薦を受けて9万5667票で当選。足立氏とは4267票差だった。前々回の第46回(2012年)では、橋下徹氏の日本維新の会ブームもあり、足立氏が10万4015票を獲得して当選。原田氏に1万4344票の差を付けた。第47回では共産党の垣田千恵子氏が3万1165票で落選している。
服部氏の元秘書だった芦澤(あしざわ)礼子さんは言う。
「服部さんは博愛主義。『損か得か』を基準に行動することはありません。そんなところが尊敬できるところでもあり、キリスト者らしいと思っています」
服部氏は1950年、福岡県八女(やめ)市生まれ。69年に京都大学法学部に入学し(後に中退)、71年、大阪に移住している。2009年の第45回衆議院議員総選挙で比例近畿ブロック単独で立候補し、初当選を果たした(~12年、1期)。国対副委員長、外務委員、海賊・テロ特別委員、議院運営委員に就任。12年には、第46回総選挙に再び比例近畿ブロック単独で立候補し、落選した。14年、第47回総選挙に大阪8区と比例近畿ブロックから重複立候補したが落選。現在、社民党国際局長としてアジアや世界を飛び回り、社民党大阪府連代表も務める。
服部氏は1968年、日本基督教団筑後福島教会(八女市)で松富勲牧師(1908~2005)から洗礼を受けた。松富牧師は神戸の中央神学校(改革派)を卒業し、41~79年まで38年間、筑後福島教会の牧師を務めた。現在、同教会の牧師は、東京神学大学出身の村本新日(しんにち)氏。
服部氏の好きな聖句は、「汝の敵を愛せよ」(マタイ5:44参照)。
徹底した現場主義を貫き、労働問題、人権、基地、エネルギー、脱原発、平和運動を行う各種団体の活動に参加。また最近では、森友学園と加計学園も実際に見学している。さまざまな現場に自ら足を運ぶことで、その問題点を肌で感じてきた。
本紙のインタビューに対して、選挙に臨む意気込みを服部氏は次のように話している。
「安倍政権による政治の私物化、やりたい放題の政治を終わりにしたいと決意しました。特に憲法9条を変えるのは許せません。平和・くらし・いのちを大切にする政治を実現します」