アフリカ北東部のエリトリアで5月以降、政府によるキリスト教弾圧が続き、これまでに少なくとも160〜170人のキリスト教徒が拘束された。中には子どものいる女性らも含まれており、劣悪な環境の監獄に収容されているという。
国際キリスト教権利擁護団体「世界キリスト教連帯」(CSW)が情報筋の話として伝えたところによると、首都アスマラや他の7つの町で行われた強制捜査で、約170人のキリスト教徒が拘束された。
一方、別のキリスト教人権監視団体「リリース・インターナショナル」は6月28日の報告(英語)で、これまでに約160人が拘束されたと伝えている。「ワールド・ウォッチ・モニター」(WWM、英語)によると、5月21日には結婚式の席で49人の福音派キリスト教徒が拘束され、この49人を含め1カ月間で約100人が拘束された。
エリトリア政府は15年前から、カトリック、福音ルーテル、正教会、イスラム教スンニ派以外の宗教を認めず、これら以外の教会や施設を閉鎖し、宗教儀式を禁じている。CSWには、最近の弾圧が「これまでになく激しく、扱いがひどいことが心配だ」という訴えが届いているという。
国連との協議資格を取得したばかりのCSWによると、拘束されたキリスト教徒の中には、ナクラ島の監獄に収容されている女性33人も含まれている。ナクラ島には、政治的見解を異にする者を取り締まるために、イタリアの植民地主義者が19世紀末に建設した監獄があり、非常に劣悪な環境で知られているという。ナクラ島の監獄に収容されている女性33人の多くは子どもがいる若い母親たちで、取り残された子どもは30〜50人に上るとみられている。
現地情報筋がリリース・インターナショナルに語ったところによると、監獄には親たちと共に子ども12人も収容されており、中には生後2カ月の赤ちゃんもいるという。
「信じられないことに、30人以上の子どもが親や後見人がいないままに放置されており、キリスト教のコミュニティーから支援を受けられないように秘密警察が見張っているといいます」と、リリース・インターナショナルは伝えている。
CSWのマービン・トーマス最高責任者は声明で、拘束されるキリスト教徒が増えていることは、「エリトリアにおける非合法宗教団体に対する迫害がまだまだ続く」ことを意味していると語った。
トーマス氏はまた、「多くの若い母親を含む女性たちが、本人たちの宗教や信念のみを理由に、悪名高い過酷な施設に身柄を拘束されるのは不当で遺憾なことであり、エリトリアは国際法上の義務に違反しています」と話す。
リリース・インターナショナルによると、最近の弾圧では、一家全員が拘束されるケースが多い。またこれまでは、聖書研究やキリスト教の儀式の最中に拘束されることが大半だったが、最近は単なる在宅中に捕らえられることが多いという。
「正教会の司祭を付き従えた治安当局者が家に現れて、その家の宗教について尋問するのです。イスラム教、正教会、カトリック、そしてルター派以外は皆拘束されています」
迫害監視団体「米国オープン・ドアーズ」が、キリスト教に対する迫害の激しい国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(2017年版)によると、エリトリアは世界10位にランクしている。
米国オープン・ドアーズは概況報告書(英語)で、「エリトリア政府がすべての宗教法人を統制しようとしているのは、2007年にエリトリア正教会(EOC)のアントニオス総主教を解任したことで明らかです。それ以来、アントニオス総主教は自宅に軟禁されています。EOC自体も、EOCを離れて福音派またはペンテコステ派の信者になった者を迫害しています」と報告している。
国連人権委員会は6月初め、エリトリアに関する特別報告者の任期を1年間延長する決議をした。
CSWのトーマス氏は同委の決定を歓迎し、「これまでのところ、エリトリアの人権問題に改善は見られていませんが、CSWは特別報告者の任期が更新されたことを心から歓迎します。それによって、引き続き人権の監視と特別報告者からの勧告や国連エリトリア調査委員会の勧告のフォローアップがなされるでしょう」と語った。
「人権侵害に対する報告義務をまず優先すべき時が来ています。国際社会が、残虐行為を伴う犯罪の犠牲になった人たちのために正義を貫いていくよう、私たちが絶えず呼び掛け、あらゆる政治犯が無条件で解放されるまで、エリトリア政権に圧力をかけ続けていく必要があります」