米国のコプト正教会を管轄するユーセフ司教が先月下旬、北米、カナダ、オーストラリアからの約40人のボランティア教会員と共に初来日した。ユーセフ司教は95年、前教皇であるシェヌーダ3世から、米国を管轄する初の司教として任命された。最初は耳鼻科の医師をしていたが、86年に聖職者として献身し、88年に司祭職として選ばれた。現在は、同地区にある42教会、56人の司祭、および37の地域社会を管轄している。アラビア語、英語での著書も多数あるという。
コプト正教会は、5世紀にローマ教会から分かれ、エジプトで発展したキリスト教の一派。近年、過激派組織「イスラム国」(IS)によるコプト正教会へのテロ事件で注目を浴びている。
現在ではエジプト以外にも、米国、カナダ、オーストラリアなど全世界に広がり、2016年には日本にも初めて聖母マリア・聖マルコ日本コプト正教会(京都府木津川市)が開設された。米国には1960年代、エジプトから多くのコプト教徒が移民として入国し、その後、徐々に全米に広がるとともに教会も設立され、以下の11州からなる司教区となった(アラバマ州、アリゾナ州、アーカンソー州、フロリダ州、ジョージア州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ニューメキシコ州、オクラホマ州、テネシー州、テキサス州)。
来日したメンバーは、23~25日に京都の聖母マリア・聖マルコ日本コプト正教会、27~28日に東京の聖アンデレ教会(港区、日本聖公会)などで聖体礼儀(礼拝)、講演、聖書講義などを行い、日本のクリスチャンたちと交流した。40人の訪問団を率いたマリリン・エクラディスさんは、初来日の感想をこう話した。
「日本はとてもすてきな国。人々はとても親切で、皆がクリスチャンのように思えました。でも、皆さん、とてもシャイですね。アイコンタクトができないので、なかなか街に出て、伝道をしようと思っても、チャンスがなかったのは残念です」
27日、聖アンデレ教会で行われた聖体礼儀は、午前9時から始まり、12時を少し過ぎるまでの約3時間。賛美、祈り、説教などがあったが、アラブを思わせる独特な調べにのせた「主の祈り」、司教が会堂を歩き回って行う散水、1人ずつ司祭が信徒の口に運ぶ聖体礼儀(聖餐式)も、西方教会のそれとは雰囲気が違った。しかし、ユーセフ司教が語る神様の愛は、プロテスタントやカトリックと変わりなく、会場にいた者は皆、教派の違いにかかわらず祝福を受けた。
聖体礼儀後、ユーセフ司教が本紙のインタビューに応じた。
――初めての日本はいかがですか。
とても快適で気に入っています。街がとてもきれいですね。最新の技術があちこちにあるのを感じます。人々もとても親切です。食事は、私の住んでいる米国とも、エジプトとも大きく違いますね。昨日は豆腐を食べてみましたが、醤油をどれくらいかけたらよいか分からず困りました。
――コプト信徒は現在、全世界にどれくらいいますか。
1600万人くらいです。そのうち100万人の信徒は、エジプト以外の国々に広がっています。エジプトでは、国民の約15パーセントがコプト信徒です。
――コプト正教会の礼拝は独特な雰囲気ですね。
コプト正教会の聖体礼儀は、英語でいう「サービス(礼拝)」とも「ミサ」とも違って、「リタジー」と呼ばれています。これは、ギリシャ語で「人々と共に働く」という意味です。ですから、他の西方教会と違うのは、この概念があるからかもしれませんね。
――「イスラム国」(IS)によるコプト正教会襲撃事件が後を絶ちません。
そうですね。私は、コプト正教会を襲うテロ事件のニュースを聞くたびに、さまざまな感情が交錯します。まず、テロで犠牲になった人やそのご家族の方々のことを思うと、人間的な悲しみを覚えるのは当然でしょう。一方、テロによって殉教した人々が天に召され、今は平安の中にいると思うと、そこに喜びを感じます。殉教したコプト信徒たちを誇りにさえ思います。
――テロリストたちに対して怒りはないのですか。
怒りがあるとすれば、「テロ」、そして「悪」に対してですね。彼らには憐れみさえ感じます。私は、ISの兵士のことも祈っています。彼らは何をしているのか分からないのですから。