1. ラッパの祭り
毎年9月か10月に、イスラエルの人たちはユダヤのお正月「ラッパの祭り」を行います。「ラッパ」といっても、金管楽器のラッパではありません。牡羊の角笛(ショファー)です。
この日、ユダヤ人たちは、シナゴーグで創世記22章を読んで、角笛を鳴らします。そして、「あなたの名が、命の書に記される良い年になりますように」というあいさつを友人、家族の間で交わします。
日本のお正月と同じように、ユダヤの新年料理には、メッセージと祈りが込められています。例えば「この1年が、良き甘い年でありますように」との願いを込めて、パンやりんごをハチミツにつけて食べます。1年が丸く円滑に過ごせますようにと、パンも丸い形だったりします。
また「実がいっぱい詰まった年でありますように」とざくろを食べる習慣もあります。日本のおせち料理にカズノコが入っている理由に似ていますね。ラッパの祭りは、ヘブライ語では「ロシュ・ハシャナー(年の頭)」といいます。家庭によっては「年の頭」だけに、家長が魚の頭を食べたりします。
2. 自分の内面を吟味するための期間
イスラエルにおいて、祭りの日は「全き休みの日」なので、安息日と同じように仕事をしてはいけない日となっています。
しかも、ラッパの祭りが行われる「ティシュレの月(ユダヤ暦の7月)」は、安息月です。この月の新月の日に、新年の祝いは行われます。
従って、神の前に心を静め、自らを省みるという、町が静かになる季節です。お酒やパーティー中心の浮かれ騒ぎの新年というよりは、厳粛な抑制された喜びの雰囲気になります。
ラッパの祭りは、神の恵みと自分の罪の悔い改めを私たちに思い出させるためのものです。この新年から10日間を「悔い改めの日」として、ユダヤ人は過ぎし年に犯した罪の赦(ゆる)しを求め、神に祈ります。祭りの行事を通して、大人も子どもも、神のことを体験的に学んでいくわけです。
3. キリスト教的な視点で見るラッパ祭り
他のユダヤの祭りと同じように、「ラッパの祭り」も神のご計画を預言的に指し示しています。
春の祭りは、イエスによって既に成就した出来事の「型」です。一方、秋の祭りは、これから起きるであろうことを示唆しています。そして、秋の祭りのスタートである「ラッパの祭り」は、キリストの再臨の型です。
ラッパ(角笛)は、キリストの再臨を彷彿(ほうふつ)とさせるものです。
例えば、ラッパが鳴り、この地上にイエス・キリストが再び来ることの記述が黙示録にはあります。また、神がラッパの響きとともに、イエスが天から降ってこられ、死者は朽ちないものによみがえる、とパウロも記します。
ラッパが鳴り、この地上にイエスが再び来ることのリハーサルとしての意味を、私たちは旧約聖書の新年の祭りに見いだすことができます。
私たちは、日常に埋没し、神を忘れてしまいがちです。あたかも人間が世界の全てを動かしているかのように錯覚してしまいます。そして、気付かない間に、思い上がってしまいます。
新年の祭りの時期、私たちもやがて来る終末の希望に思いをはせながら、静まって内面を省みる時を持とうではありませんか。
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