1. 夫婦をつなぎとめるのは何か
19歳の時、私は新潟県・佐渡島の祖父母の家に遊びに行きました。私の祖父と祖母は、毎日一緒に手をつないで海岸を散歩する仲良し夫婦でした。
「どうすれば、おばあちゃんたちのように夫婦関係が上手くいくの?」。ロマンチックな恋に憧れていた私は、祖母に尋ねました。
祖母から返ってきた言葉は、意外なものでした。
「ひたすら、忍耐だよ」
控えめな性格の祖母が、大学生の私の質問に、実に険しい表情で答えたのです。祖母の意外な表情を見た気がしました。
2. 子どもは夫婦のかすがいか
「子どもは夫婦のかすがい」と昔から言われています。夫婦をつなぎとめる鍵は子どもだ、ということです。
ある意味、真実かもしれません。ある50代の大学教員は、「妻にはだまされた。でも、娘はかわいい」と言っていました。娘さんがいることで、離婚を踏みとどまっているそうです。
私の友人は、海外企業法務やM&Aを手掛ける「渉外弁護士」だったのですが、最近「離婚弁護士」に転身しました。現在、離婚案件の仕事が、次々と舞い込んでいるようです。
「昔は、子どもがかわいそうだ、と離婚をとどまったものだ。でも、最近は子どもも夫婦のかすがいになっていない」と彼は言っていました。
3. キリストが夫婦のかすがい
私の友人Kさんは、夫婦関係が上手くいっていませんでした。
最初は、ちょっとしたボタンのかけ違いでした。Kさんが奥さんに頼まれた用事を忘れていた、記念日を覚えていなかった、子どもとの約束よりも仕事の会議を優先させた。
しかし、次第にケンカがエスカレートし、2人の間に大きな「隔ての壁」が築き上げられてしまいました。同じ屋根の下に住んでいても、口もきかなくなっていました。
Kさんの心の中は、奥さんへの怒りと憎しみで煮えくり返っていました。離婚の話も進んでいました。
Kさんの奥さんへの憎しみが、Kさん自身を一番傷つけていました。それでも、Kさんは奥さんを裁くことをやめられませんでした。Kさんは、自分のことを「悪い妻に傷つけられた被害者だ」と思っていたからです。
しかし、ある会話をきっかけに、自分の欠点や傲慢(ごうまん)さが、奥さんを傷つけてきたことに Kさんは気が付きました。
「自分は自己中心な妻に傷つけられた被害者だと思っていました。でも、気が付かないうちに私も妻を傷つけていました。しかも妻に心の中で怒りを抱き続けることでも、自分も加害者になっていたのです」とKさんは言います。
Kさんは「奥さんへの怒り」という自分の「罪」を悔い改め、奥さんのために祈るようになりました。
しばらくしてKさんの変化に気が付いた奥さんも、態度を軟化させて再びKさんに心を開くようになりました。
私たちは、相手を変えることはできません。私たちができることは、神に自分の罪が赦(ゆる)されたように、相手を赦し祈ることだけです。
「義人はいない。ひとりもいない」「すべての人が罪に定められた」と聖書は語ります。それ故、私たちは主の祈りで「われらに罪を犯す者をわれらが赦すごとく、われらの罪をも赦したまえ」と祈るのです。
イエス・キリストに自分の罪が赦されたように、互いに赦し合う。その意味で、キリストこそが夫婦のかすがいなのです。
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