砂漠でのイスラム教徒のコミュニティーの中で、キリスト教病院の働きを開拓することは簡単な仕事ではない。しかしそれが、わずか数人の医療の専門家たるキリスト教徒がチャドで行ってきたことだ。中央アフリカの国々では、気温が頻繁に40度以上に上がる。腸チフス、マラリア、デング熱が蔓延(まんえん)し、人口のほとんどは50歳を過ぎて生きることができない。質の良い医療の提供が緊急に必要な地域だ。
外科医のアンドレア・ホチキン氏、マーク・ホチキン氏夫妻は、BMSワールドミッションから派遣され、英国のキリスト教徒の支援を受けてチャドの首都ンジャメナの近くにあるギネバー2世病院で2011年の開院以来奉仕している。夫妻は医師として、外科医として、地域保健プロジェクトの指導者として、また友人としてイスラム教徒がほとんどを占める地域の人々に仕えており、これまで驚くべき結果を目の当たりにしてきた。夫妻の働きの主要な領域の一つは、母子保健サービスの充実だ。100人に9人の乳児が1歳の誕生日を迎えられずに死亡するこの国では、不可欠なサービスだ。
「人々の人生に違いをもたらすことができることは、本当に満たされます」とマーク・ホチキン博士。「私たちは、神が与えてくださった仕事に感謝します。このような地で働くことは、まさに私が医学の道に導かれていると感じた一番の理由です」
ここ5年間、夫妻と地域や外国人の職員からなるチームが、時に50度にもなる高温の地域で働いてきた。そしてギネバー2世病院では4200人以上の新生児が健康な母親から生まれてきた。最近新しい母子保健センターがオープンしたことで、この病院では次の5年間に1万人の分娩を見込んでいる。
英国では、妊娠した女性は7回から10回の定期健診を受ける(訳注:日本では12~14回)。チャドでは、多くの女性が妊娠中には医療的なケアを受けず、分娩の時にすら受けない人もいる。アンドレア・ホチキン博士は、「チャドの女性の多くは健診に来ません。人々は、病気になるまで妊娠管理の重要さを見過ごすことを余儀なくされるのです。しかしそれでは、問題があっても前もって発見することができないことを意味します」と述べた。
アンドレア博士は、妊娠管理の重要性について人々を教育することで、多くの母親と乳児の命が救われることを願っている。良い兆候は出ている。出産するためにギネバー2世病院を訪れる女性の数が、開院以来月ごとに増加し続けているのだ。新しいセンターができれば、その数はさらに速く増加するとみられる。
母子保健センターが開設されてから3カ月間で、病院の助産師10人で405人の乳児を取り上げた。2014年から15年の同時期には284人だった。
確かに増えてはいるが、アンドレア博士はさらに多くを熱望している。受けることのできるケアにアクセスしない女性は、まだ多くいるからだ。
英国の出生10万人当たりの妊産婦死亡率が9なのに対し、チャドでは856だ。伝統的にチャドの女性は、時にほとんど光の入らない土で建てられた自宅で出産する。異常が起きてもすぐに医療処置を受けず、最も近い病院はしばしば数時間、時には数日かかる。解決が簡単な事例ですら、助けを得たときには、母子にとって、あるいは新生児にとってすでに手遅れのこともある。
これらの不必要な死を避けるために、ギネバー2世病院のチームは、出産前の母親に病院でできる限りの設備にアクセスするよう勧めている。アンドレア・ホチキン博士は母子保健プログラムを指揮している。プログラムの一部では、病院のチャド人助産師を付近のイスラム教徒のコミュニティーに派遣し、妊娠管理と病院での出産の重要性を説明している。
ギネバー2世病院で生まれた4200の「奇跡」は、アンドレア・ホチキン博士、マーク・ホチキン博士夫妻のような人々の素晴らしい貢献がなかったとしたら、今は生きていなかったかもしれない。新しい母子保健センターが適切に運用され、啓蒙活動も順調に行われている現在では、今後数千人ものさらに健康な母親が、乳児を連れて自宅に帰れるようになるだろう。
もしこのような働きを支援したいのなら、今BMSワールドミッションへ寄付をしよう。BMSワールドミッションはキリスト教宣教団体で、世界約35カ国で活動している。