愛媛県の伊方原発に反対している「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」代表で日本基督教団八幡浜教会(愛媛県八幡浜市)会員の斉間淳子さんらが、第27回多田謡子反権力人権賞に選ばれた。多田謡子反権力人権基金の運営委員会が3日に公式サイトで発表した。
同委員会は選考理由について、「斉間淳子さんは、伊方原発から直線距離で約10kmの八幡浜市に居住し、1981年9月におきた伊方原発近海での魚の大量死をきっかけに、子どもたちを守りたいという気持ちから、原発反対運動を始めました。チェルノブイリ原発事故後の1988年2月、四国電力が伊方原発の出力調整実験を行うことを発表したのに対し、斉間さんが中心となって『八幡浜・原発から子どもを守る女の会』を結成し、伊方町へのビラ入れや反対署名を繰り広げ、全国的な反対運動の広がりを地元で支えてきました」と述べている。
同委員会はさらに、「地元で反対運動を続ける斉間さんに対しては、匿名の人物からの脅迫電話や嫌がらせの手紙、ニセ注文などの卑劣な嫌がらせが続けられましたが、斉間さんはこれに屈することなく闘いを続け、現在も、伊方原発3号機再稼働反対運動の中心的存在となっています。安倍政権と原発推進派が、川内原発に続き伊方原発3号機の再稼働を目論み、今後も厳しい状況が予測される中、さらなる闘いの継続と昂揚に期待して多田謡子反権力人権賞を贈ります」と説明している。
斉間さんは『原発とキリスト教』(新教出版社、2011年)で、「伊方原発の地元で神を呼び求める」という文章を著し、1日、愛媛県松山市で本紙に対し、「原発は教会のタブーになっている」と語っていた(関連記事はこちら)。
1943年生まれの斉間さんは今年4月、伊方原発運転差し止め請求訴訟の意見陳述書で、40年に及ぶ伊方原発周辺の住民たちの闘いや自身の関わりを振り返りつつ、「四国電力は再稼働の申請を取り下げるべきです。また松山地裁におきましては、いっこくも早く伊方原発の運転差し止めの判決を出してくださいますようお願いいたします」などと述べている。
斉間さんは1日に松山市で行われた「STOP伊方再稼働!全国集会 in 松山」で、南海日日新聞(2008年まで八幡浜市で発行)の元記者で10月15日に亡くなった伊方原発反対八西連絡協議会事務局担当の近藤誠さんの遺影を胸に、近藤さんが原発をなくそうと病床で最期まで訴え続けたことを報告した。集会の参加者たちは集会後に松山の市街地をデモ行進し、斉間さんは途中までその先頭を歩いた。
今回の受賞者には他に、日本軍「慰安婦」問題解決・関西ネットワーク(関西ネット)の共同代表である方清子(バン・チョンジャ)さん、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが選ばれている。
同委員会によると、受賞発表会は12月19日(土)午後2時から5時まで連合会館(東京都千代田区)で行われる予定で、受賞者には多田謡子著『私の敵が見えてきた』(編集工房ノア、1988年)と賞金20万円が贈呈されるという。
同基金は、1986年12月18日に29歳の若さで夭折した弁護士・多田謡子さんを記念し、その遺志を将来に生かすために、謡子さんの遺産に有志のカンパを加えて1989年6月13日に設立されたもの。毎年、謡子さんの命日である12月18日前後に、国家権力をはじめとしたあらゆる権力に対して闘い、人権擁護に尽くした団体および個人を顕彰して賞金を贈呈するとともに、受賞者の講演会を開催して、人権擁護に関心ある人々と広く交流していくことを主たる目的としている。
なお、昨年には、無実の元死刑囚で再審と刑の執行停止を勝ち取ったカトリック信徒の袴田巖さんなどが、第26回同賞を受賞している。