8月に逮捕されて以降、消息が依然と分からないままのキリスト教徒の著名人権派弁護士の母親が、息子に宛てて痛ましい公開書簡を書いた。
消息が分からなくなっているのは張凱氏。張氏は、そのキャリアのほとんどを迫害下の教会を守ることに費やしてきた。習近平国家主席の人権政策を公に批判し、当局による宗教的シンボルの破壊にひんしている教会に法律面から助言をしてきた。
しかし8月、浙江省温州市の教会にいるところを警察に逮捕された。張氏は「省の治安を脅かした罪」と「公の秩序を害した罪」で告発された。この逮捕を人権団体や圧力団体は厳しく批判している。
逮捕以来、張氏の行方は分からず、法的な代理人と連絡を取ることができないまま厳しい懲役刑か死刑に直面しているという報告がある。
張氏の母親は26日、張氏に宛てた手紙を公開し、息子が行方不明になったことを嘆き、所在についての情報を求めた。
張氏の母親はキリスト教系人権団体「チャイナエイド」を通して手紙を発表した。手紙には、「あなたの弁護人と私は、あなたが逮捕されてからの状況について、ほんのわずかな情報のかけらさえも得ることができません。最近では、私はひどく動揺しています。あなたがいないことの他には、私の心には何もありません。私は自分自身の心の状態をコントロールしたいのですが、あなたの面影がいつも私の目に浮かんでいます」と書かれている。
張氏の母親はまた、息子の業績と正義を求めるための決断についても語った。非常に良い学業成績を収めたにもかかわらず、張氏は、安全な仕事や、中国の弁護士としての出世コースでもある政府関連の職に就いてほしいという母親の願いを拒んだという。
「あなたが大学を卒業したとき、律師資格考試(日本の司法試験に相当)に、市全体で2位の成績で合格しましたね。良く勉強し、しっかりと基礎を築いたので成功したのです。現在の国内の混乱に直面し、あなたは社会の不正義や危険な挑戦と闘いました。それは必要だったのですか。あなたは自分に、それほどまでプレッシャーをかけなければならなかったのですか。でもあなたは、『もし兵士が、自分が戦場で敵を打ち破る必要があると知っていたら、現地へ赴かないでしょうか。私はこれをしなければなりませんし、リスクを恐れるわけにはいきません。私は思い切って、自分自身で正しいことを行わねばなりません』と言いました」
この手紙の中で張氏の母親はまた、中国の現体制下における張氏の命についての恐怖をつづり、息子の帰還を願った。
「この悲惨な難局の中で、私はおびえ、あなたの状況について本当に心配しています。友人や同僚は『良い息子さん』だとあなたを称えます。私は誇りに思うべきでしょうが、それでも心配と恐怖に圧倒されています」
実名を伏せてこの手紙を書いた張氏の母親は、手紙の最後に、現在の政権がまもなく倒れることを願っているという楽観的な言葉も添えた。