日本賛美歌学会(会長:高浪晋一)の第15回大会が5日、立教大学池袋キャンパス(東京都豊島区)の立教学院諸聖徒礼拝堂で行われた。今大会の主題は、「新しいドイツのカトリック教会歌集『Gotteslob(ゴッテスロープ)』(2013年)〜豊かな倉から 新しい歌と古い歌を〜」。講師に、ドイツのヨハネス・グーテンベルグ大学マインツ(マインツ大学)教授で、典礼学、賛美歌学が専門のアンスガー・フランツ博士が招かれ、博士が編纂(へんさん)顧問として携わった『Gotteslob』について講演し、約90人が参加した。
2001年に設立した日本賛美歌学会は現在、超教派の約150人で構成されている。年に一度大会を開き、3年に一度は海外から講師を招聘(しょうへい)している。今大会の実行委員長である植木紀夫氏は、「世界の賛美歌において何が起きているのかを見たとき、第二バチカン公会議(1962~65年)からおよそ50年目の節目を迎えた2013年に、38年ぶりに改訂されたドイツのカトリック教会歌集『Gotteslob』から得ることは大きいだろうと考えた」と、今回、ドイツからフランツ博士を招いた経緯について話した。
フランツ博士は、「ドイツ語圏教会歌集の歴史とその意義」「あらゆる種類のよい魚たち~新カトリック統一聖歌集『Gotteslob』入門」と題して、2部に分けて講演。前半では、ドイツの歴史を中世にまでさかのぼり、改革派、ルター派、カトリックそれぞれにおける賛美歌集・聖歌集の発展、各教派の統一歌集が形成されていった過程について話した。フランツ博士は、現代でもよく歌われる16~17世紀に生み出された歴史ある賛美歌は、これまで途切れることなく歌い継がれてきたわけではなく、古い賛美歌を排除した啓蒙主義時代を経た、19世紀の復興運動と賛美歌研究、そして20世紀の教会生活への還元の賜物(たまもの)によるものだと話し、賛美歌研究を行う意義をあらためて強調した。
後半では、ドイツ語圏典礼委員会の国際的な作業グループを中心とする働きによって、『Gotteslob』が成立するまでの歩みを説明。また、『Gotteslob』の聖歌部分に収録された約290曲の内訳を表で示し、130曲が新しく採用されたこと、2世紀から21世紀までに生み出された聖歌がバランスよく収められていることを語った。これらの聖歌には、プロテスタントで歌われている伝統的な賛美歌や、これまで外されていたカトリック教会の伝統的な聖歌、ラテン語聖歌や東方教会の歌も含まれており、78曲がルター派の『福音主義賛美歌集』(1993年)と一致しているという。古い賛美歌の復活、新しい賛美歌の採用、賛美歌による教派を超えた一致を『Gotteslob』に見ることができ、今のドイツのカトリック教会の姿勢を示していると説明した。
日本賛美歌学会では、海外から講師を招聘する際、講師が選出した海外の賛美歌を歌集委員会で検討・日本語翻訳し、研究の成果として、それらを収録したオリジナル歌集を発表している。今大会では、フランツ博士が『Gotteslob』から特徴的な聖歌を選び、さらにその中から、まだ日本の賛美歌集に収録されていない23曲を一冊に収めた『神をたたえよ~ドイツのカトリック教会歌集『Gotteslob』(2013年)より』が配布された。講演の前半と後半の間には、参加者全員で『神をたたえよ』から約10曲を、実際に歌う時間が設けられた。
スイスの修道女が作詞したという「闇夜は去りゆく」、4世紀の聖人について歌った子ども聖歌「聖マルチン」など、1曲ごとになされる丁寧な解説を聞くとともに、言葉をそろえて歌うためのアドバイスを受けながら、オルガンの伴奏に合わせて参加者全員で賛美をささげた。多くの参加者が初見だったが、会場となった礼拝堂には驚くほど力強く美しい歌声が響き渡った。フランツ博士は、「天使がこの会堂に現れて、皆さんの口を通して素晴らしい歌を響かせてくださったようだ」と感想を語った。
最後には、『Gotteslob』から「日々の典礼 夕べの賛美」がささげられ、全体を通して賛美が溢れる大会プログラムは終了した。フランツ博士は、同学会の2つの支部でも講演を行い、7日の中部支部の講演会には約50人が、12日の関西支部の講演会には約90人が参加し、盛況のうちに幕を閉じた。
同学会では会員の入会を、随時受け付けている。またオリジナル歌集(『神をたたえよ』ほか)の頒布も在庫のある限り対応している(有料)。問い合わせは、同学会事務局(メール: [email protected])まで。