イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)は、ISが制圧しているイラク第2の都市モスルにある最大の教会の一つを、戦闘員用のモスクに転用しようとしている。
その告知は、街の通りに掲示する形でなされた。モスルは1年前の6月10日、ISにより制圧された。以前はイラク国内におけるキリスト教徒の中心地だったが、ISによる制圧後、改宗するか、人頭税を払うか、街を離れるか、あるいは殺されるかの選択を迫られ、現在は市内にキリスト教徒はいないとみられている。
バチカンのフィデス通信によると、モスクに転用されようとしている教会は、聖エフライム・シリア正教会。同教会は、モスル制圧後に既にISにより没収されており、「ムジャヒディン(イスラム聖戦士)のモスク」として再開される予定だという。イラクの地元メディアの報道によると、同教会は、黒と白のISのシンボルが入った布で装飾されており、布には「アラーの他に神はなし」「預言者ムハンマド」と書かれている。
戦闘員たちは教会の丸屋根から十字架を外し、建物から全ての家具とキリスト教のシンボルとなる物を運び出した。
中東地域のアッシリア人やヤジディ教徒のような、民族的・宗教的少数派への保護を訴える人権団体「ア・ディマンド・フォー・アクション」の創立者であり代表のヌリ・キノ氏は、米ニューズウィーク誌に対し、これらの動きは、イラクで少数派であるキリスト教徒へのISの意図を示すものだと語った。
「1年前、ISは『改宗するか、人頭税を払うか、死ね』と言いましたが、それはうそだと分かりました。たとえ人頭税を払っても、ここにとどまることはできないのです」とキノ氏。「もし教会をモスクに変えたのなら、それは彼らの民族浄化、多くの人が大虐殺と呼ぶであろうことが起こる前触れです。彼らは私たちの産物、教会を破壊し、できる限りの方法で私たちを消し去ろうとしているのです」と語った。