過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員が、イラク北部にある古代教会を襲撃し、十字架を壊して下ろし、ISの旗を掲揚している写真が公開された。
ISに関係するとみられるツイッターに16日に投稿された写真には、像や壁画、教会の鐘が破壊されている様子が写されている。ある写真には、昨年6月にISによって制圧されたイラク第2の都市モスル北部にある聖ジョージ修道院の十字架が取り外され、黒いISの旗を掲揚する戦闘員の姿が写っている。さらに、戦闘員がキリスト教絵画をハンマーで壊し、遺跡やマリア像を床に投げ捨てている姿も写されている。
これらの写真は16日に公開されたが、襲撃自体は7日にあったと報じられている。聖ジョージ修道院については昨年、ISが女子収容所として使用していることが報道されていた。
ISに制圧される前、モスルは世界で最も古くからキリスト教徒が住む地域の一つであった。イスラム教スンニ派の過激派組織であるISのメンバーはキリスト教徒に対し、逃げるか、イスラム教に改宗するか、あるいは人頭税を払うかのどれかを選ぶよう強制し、結果この歴史的な街からキリスト教徒を追い出した。拒否した者は、「剣による」死の脅威にさらされた。
ISはこのような古代の遺跡が偶像礼拝的なものであると宣言し、イラクとシリアにある多くの宗教遺構を破壊した。今月初旬には、モスル郊外のニムルドとハトラにあるアッシリア人の遺跡がブルドーザーで破壊された。どちらもユネスコの世界遺産だ。
中東の少数派を支援する活動をしている「ア・ディマンド・フォー・アクション」で、文化財の保護について担当しているアッシリア人考古学者のニネベ・ヤコウ氏は、ISの行動を「分別がない」と非難する。ISは「組織的にイラクの遺跡、特にアッシリア人の遺跡を標的にしており、イラクが平定されるまでは彼らは破壊をやめないだろうと考えています」と語った。
「これは文化財の危機の問題だけではありません。最も緊急度が高い人道的危機なのです。ISはイラクの人々と歴史をこの地から抹消しようとしています。これは間違いなく文化的、また民族的浄化なのです」とヤコウ氏は述べた。