人にはさまざまな個性、才能があり、また欠点もある。しかし互いに協力し合えば、一人のときよりも良い結果を残せる――。聖書の中でも名言の宝庫といわれる「コヘレトの言葉(伝道者の書)」にある内容だ。人々が協力し合い、必要のある人たちを助ける。チャリティーイベントはまさにその体現。長澤さおりさんは、さまざまなチャリティーイベントを企画・開催するNPO団体「Roots of Love」の代表だ。
Roots of Love のコンセプトは、「Charity × Artists」。チャリティーイベントを開催するだけではなく、夢を持ちながらも人前に立つチャンスがないアーティストたちに、表現する舞台を提供している。「チャリティーイベントと聞くと、もしかしたら、堅苦しいイメージで参加しにくいなんて思っている人もいるかもしれませんが、私たちにできることは、身近にたくさんあります。それを知ってもらうきっかけのための活動」と、さおりさんは語る。
Roots of Love の活動を始めたのは昨年8月。活動のきっかけは、「クリスチャンになったことが最大の要因です」と言うさおりさんは、2013年2月に洗礼を受けた。それまでは、舞台女優やダンサーなどさまざまなことにチャレンジしていた彼女だが、やりたいことが途切れたときに、ふと思い立って教会に行ったのが、そもそものきっかけだという。
「それまでの私は自分の努力だけを信じていました。オーディションを受けて、うまく行かなかったら落ち込んで・・・。そうやって、『日ごとの糧』を自分の力で探していたけれど、神様の存在を知って、全ては自分の力ではなくて、『与えられるもの』だと知りました。神様や愛、そういう目に見えないものをも大切にしたいと思うようになりました」と話す。
その後、子どもたちの支援をしたいと考え、カンボジアの10歳の女の子のチャイルドスポンサーを始めた。定期的に手紙のやり取りを行っていたが、そこで受けた衝撃が、Roots of Love を始める直接の引き金となった。
「ある日、彼女が『私は先生になりたい。そして次世代に良い教育を届けたい』と、将来の夢を話してくれました。彼女は、自分のことよりも次世代のためのビジョンを描いていました。金銭面では私が支援している側かもしれないけれど、彼女からお金には換えられない人を思いやる心を教わりました。彼女のような子どもたちが夢をかなえられる世界にしたい」。さおりさんは、自身が豊かな国、日本の出身だからこそ、このような少女の存在を日本で生活している人たちに知ってもらい、自分たちにできることを伝えたくなったという。
「神様を知る前の私は、表舞台に立つことばかりを考えていたけど、かなわなかった。舞台に立つことの大変さが分かるから、アーティストにチャンスを与えてあげたい。そしてその素晴らしいパフォーマンスの収益を使って子どもたちを支援すれば、どちらも笑顔になると思います」とさおりさん。新約聖書の言葉「あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのですから、神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕えなさい」(1ペテロ4:10)は、Roots of Love のテーマだという。
チャリティーは課題が大き過ぎて結果がすぐに見えにくいこともあるが、自分たちにできることをシェアしてつなげていくことが大切だとさおりさん。「政府や大きな組織は、確かに大きな影響力があって、いろいろなことができるかもしれないけど、どこか遠い存在という気がします。そうではなくて、若くても、女性でも、誰でもできるファッションやパフォーマンス、買い物など、身近なものを通して行動し続けたい」とビジョンを語った。
Roots of Love は、イベントの企画・運営の他に、フェアトレード商品やプロを目指しているアーティストのサポートも行っている。詳細はウェブサイトで。