(3)人知を超え、愛し合うことを目的とした言葉
「私たち人間の能力ではできない仕事を、あえてさせてくださる神」というテーマで、ビジネスについて聖書から学ぶにあたり、「聖書の言葉」はどのような特異性があるのかについて触れていますが、今回はその3つ目について語ります。
「わたしの思いは、あなたがたの思いと異なり、わたしの道は、あなたがたの道と異なるからだ。――主の御告げ――天が地よりも高いように、わたしの道は、あなたがたの道よりも高く、わたしの思いは、あなたがたの思いよりも高い」(旧約聖書イザヤ書55章8、9節)
神様の思われることと、私たち人間が思うこと、私たちが幸せのために思い描く計画・道と、神様が立てられている計画・道とは、「異なる」と言われています。それはどのように異なるかと言えば「――主の御告げ――天が地よりも高いように、わたしの道は、あなたがたの道よりも高く、わたしの思いは、あなたがたの思いよりも高い」と言われています。
私たちは皆それぞれ、自分や家族、周囲の人々のために、どうしていけば幸せになるのかを考え計画しますが、神様も私たちに対して、私たちが幸せになるための計画を立ててくださっているのです。そして、神様が私たちのために立ててくださっている計画は、私たち人間が立てる計画よりも、はるかに「高い」のです。
私たちは、私たちの知り得る情報と知恵の中でしか事業計画を立てることはできません。しかし、神様が認知されている情報は、この世のすべてのものに及んでいます。また、私たちは、明日何が起こるのかを知りません。しかし、神様は明日や遠い未来に何が起こるのかをも知っていると言われます。私たちには分からない、全ての人の心の中の思いをも全て知っている、と聖書では語られています。
さらに、私たちはとかく自分のことばかりを考えがちです。しかし神様は、私たちだけではなく、私たちの周囲の人をも愛しておられます。それだけではありません。私たちが名前も知らない人たちにも目を向け、愛しておられます。
私たち人間は、一般的に自分の幸せや家族の幸せ、あるいは会社の発展を望むことはあっても、他人の幸せやライバル会社の発展を念頭に置くことはあまりありません。しかし、神様は私たちだけを幸せにしようとは考えていません。私たちを含め、周囲の人々をも幸せにしたいと思われ、ご計画されているのです。
例えば、私たちは何かの事業計画が立てられたり、ノルマが掲げられたりすると、その達成のためにがんばろうとします。そして、達成こそが第一の目標となり、その陰で人間関係が軽んじられ、損なわれてしまうことがあるのではないでしょうか。成績が進退問題に関わるものであったり、経済的に死活問題に直面していたりする状況であるならば、なおさら、他人のことなどに心を配る余裕がなくなってしまいがちです。
ところで、聖書を読むと、私たち人間と神との関係、隣人との関係、自分自身との関係について、何度も何度も触れられています。たとえ危機的な状況であったとしても、神様は「関係」を大切にされていると言われています。「関係」のあり方こそ、大事なのでしょう。
「イエスは答えられた。『一番たいせつなのはこれです。「イスラエルよ。聞け。われらの神である主は、唯一の主である。心を尽くし、思いを尽くし、知性を尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。」次にはこれです。「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。」この二つより大事な命令は、ほかにありません』」(新約聖書マルコの福音書12章29~31節)
「あなたがたに新しい戒めを与えましょう。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい」(新約聖書ヨハネの福音書13章34節)
神との関係が最も大切なことを前提として、米国・サドルパック教会のリック・ウォレン牧師は次のように語っています。
「人生において大切なことは、何かを達成することでも、獲得することでもありません。最も大切なのは、人との関係です」(リック・ウォレン著『人生を導く5つの目的』(パーパス・ドリブン・ジャパン発行)より)
私自身、過去を振り返れば、人間関係よりも事業達成を優先してきたことが、数多くありました。
危機的な状況や、事業達成がうまくいかないと、私たちはよく、自分が思い描く最善と思えることを神様がかなえてくださるようにお祈りすることがあります。けれども、この祈りは、神様を同列かそれ以下の存在として見ているのかもしれません。
むしろ、私たち人間が知り得ること、思い描くことは、神様のお考えになられていることと比べれば、天と地ほどの差がある、ということを真実として受けとめ、「自分の思い描くことは最善とは限らない」という謙虚さが必要なのでしょう。
そのような謙虚さを持てるようになると、私たちが危機的な状況に置かれている中で、事業計画も人間関係も、明らかに人間わざとは思えない方法で神様は身近に関わり、働かれて、喜びを与えてくださるのです。
私たちは、事業計画の達成が大切ですし、人間関係も大切です。自分自身の健康管理も大切ですし、家庭のことも大切です。頭では分かっているつもりです。でも残念ながら、そのすべてをうまくコントロールするだけの能力はありません。
けれども、神様がそのすべてに関わることができ、そのすべてを念頭に置いて計画を立てられ、働かれて、私たちがその中で立ち回ることができるように支えてくださるのです。
ですから、「互いに愛し合う」ことを事業や使命の理念とするなら、神様のバックアップによって、周囲をも潤し、尊敬される会社、人格者に変えられ、育っていきます。
最初は、どう愛し合えばよいのかも分からないかもしれません。それで良いのです。本当に愛し合うとは、どういうことなのか既成概念に囚われていて、本当の愛の関係が見えていないものです。ですから、「神様、私には『互いに愛し合う』ことがどのようなことなのか分かりません。教えてください」と祈ることから始めて良いと思います。
祈り
「私たちの天の父よ、御名をあがめます。神様の思いと私たちの思い、神様のご計画と人の計画は大きく異なり、神様の思いとご計画は、はるかに勝っていることを知りました。また、私たちの人生は私たちだけが考えていたのではなく、神様がご計画を立てておられたことを知りました。そして、私たちは自分のことを優先して生きてきました。しかし、神様は私たちの周囲の人々を視野に入れて豊かにしようとご計画されていることを知りました。それはどのようなご計画なのでしょうか。きっと私たちの頭脳で考えても想像も及ばないことでしょう。神様のご計画を教えてください。神様のご計画を実現してください。そのご計画に、私も加えてください。この願いをイエス・キリストの名によってお祈りします。アーメン」
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森正行(もり・まさゆき)
1961年兵庫県西宮市出身。建設専門学校卒。不動産会社、構造建築事務所にて土木・建築構造設計部門を5年間勤務。1985年受洗。関西聖書神学校卒。岡山・岡南教会にて伝道師・副牧師3年間奉仕。1995年より現在、日本イエス・キリスト教団宮崎希望教会牧師。