【CJC=東京】主要なイスラム教学者138人が、世界中のキリスト者に宛てた声明「私たちとあなた方の間の共通の言葉」を10月11日発表した。声明の日付になっている13日はイスラム教徒の断食月のラマダン明けの祭りを控えてのもの。
今回の声明は発表まで3年を掛けていると言う。それでも、そこに緊迫感をただよわせていることは確か。「私たちが失敗するなら、私たちの永遠の精神もまた危機にひんしている」と、学者たちは「闘争と破壊に勤しむ」人に告げている。
声明は、イスラム教世界の合意形成に力を注いだもので、ヨルダンのアンマンにある王立アアル・アルバイト・イスラム教研究所が声明作成に3年以上を費やしたという。研究所長のハジ・ビン・ムハンマド王子の意向が働いていることは確かと見られる。
声明は、ローマ教皇、正教会総主教14人、東方正統教会の首長5人、カンタベリー大主教、ルーテル世界連盟議長、バプテスト世界連合議長、世界メソジスト評議会総幹事、世界改革教会連盟総幹事、世界教会協議会総幹事ほか「あらゆるキリスト教会指導者」に宛てたもの。
この声明を受けたキリスト教側は戸惑いを隠せない。世界平和への不可欠な段階となるものなのか、反応も歓迎から慎重なものまで様々だ。
バチカン(ローマ教皇庁)の諸宗教対話評議会議長のジャン=ルイ・トーラン枢機卿は、声明に新たな立脚点があることは評価している。英国国教会(聖公会)の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローアン・ウィリアムズ氏は、声明が世界各地で求められている関係を示唆するものと述べた。ルーテル世界連盟のマーク・ハンソン議長は、声明文の美しさを読み取り、誠実さと親交のビジョンを研究することを奨励した。
ただこれらは声明が出されたことを認めるに止まっており、応答ではない。正式な応答には数年掛かる可能性もある。むしろキリスト者とイスラム教徒が様々な場で、共に声明を読み、その基盤をなしている神学を研究することの中で「共通の言葉」への基盤を作り出すことが、最大の応答になるとの見方(英カトリック週刊誌『タブレット』)も出ている。