仕事を辞めた。今までの償いを込め、一カ月間のテント集会をすることにした。真新しいテントの寄付もあり、朝は訪問伝道、昼からもマイク片手に路傍伝道と子供会。夕方は駅前でチラシを配り路傍伝道。集会が始まると、司会も説教も一人でする以外にない。
空き地に張られたテントに人々が集まり話を聞いていると、不良たちが爆竹を鳴らして邪魔しにくる。その夜も外は騒がしかった。一人の男がスッと外へ出て、一言低い声で注意した途端、悪ガキは雲の子を散らすように逃げていき、二度と邪魔しなくなった。後であいさつすると、奈良では有名な組織に属する方だった。長い間おつき合いし、彼の子どもたちも教会学校に通ってくれた。
一カ月間の真夏日の伝道で、真っ黒に日焼けした。そう多くの人が救われたわけではなかったが、充実感が身体にみなぎり、聖霊の助けと力を感じて、たくましくなったように思った。
集会が終わると、吉川姉と木下姉が、「先生、ご苦労さまでした。1ヶ月間のご苦労にプレゼントをしたいのですが、自転車がいいでしょうか?バイクをと思うのですが、免許をおもちじゃないでしょう?」と言うではないか。言われて驚いた。実はテント集会が終わる前日、何となく導かれて警察に行き、バイクの免許を取っていたのだ。
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榮義之(さかえ・よしゆき)
1941年鹿児島県西之表市(種子島)生まれ。生駒聖書学院院長。現在、35年以上続いている朝日放送のラジオ番組「希望の声」(1008khz、毎週水曜日朝4:35放送)、8つの教会の主任牧師、アフリカ・ケニアでの孤児支援など幅広い宣教活動を展開している。
このコラムで紹介する著書『天の虫けら』(マルコーシュ・パブリケーション)は、98年に出版された同師の自叙伝。高校生で洗礼を受けてから世界宣教に至るまでの、自身の信仰の歩みを振り返る。(Amazon:天の虫けら)