教会で本格的な経営を学ぶという新しい取り組み「本格的な経営セミナー―地域・世界を変えるために」(日本国際飢餓対策機構全国賛助会主催)が19〜20日、大阪府八尾市のグレース大聖堂で開催され、全国から牧師やクリスチャン経営者、NGO関係者ら約70人が参加した。KAIST(旧韓国科学技術院)経営大学の金永杰(キム・ヨンゴル)教授と国際NGO「ビジョン・オブ・コミュニティ・フェローシップ(VOCF)」のランディー・ホーグ最高経営責任者(CEO)が「超一流NGOの条件」「地域社会と国の変革」などをテーマに講演し、参加者は熱心に聴き入った。
キム氏は、IBMやP&Gなど100年以上の歴史を経て今なお世界最高水準と言われる超一流企業の事例を挙げながら、NGOの現状や取り組むべき課題について語った。超一流企業の特徴として、▽壮大な使命・ビジョンを持っている、▽継続的に挑戦と改革を行っている、▽危機を乗り越えることができた、の3つを挙げ、超一流NGOとなるために、▽お客様第一主義、▽新技術の開発、▽知識に焦点を合わせる、▽創造的なリーダーになる、の4つの基本方針を提案。「優れたNGOになるためには改革が必要」と訴えた。
「『皮をはぐ(強制的)改革』はあなたを疲れされ、『脱皮する(自発的)改革』はあなたをエキサイトさせる。あなたがエキサイトすれば、あなたの頭脳がよく働き、いつか『ワオ!』という素晴らしいアウトプットを創り出す」と改革の実践を促した。
モバイル革命にも言及し、NGOがSNSや動画交流サイトなどのソーシャル技術を新たな資金調達やスポンサーの開拓、戦略強化、緊急支援の対応力向上などにつなげる手法について語った。
「2014年は、歴史上初めて携帯利用者がデスクトップ利用者を越えたとても重要な年」とモバイル対応の重要性を強調し、フェイスブックなどソーシャルメディアの普及による消費者行動の変化を指摘した。「NGOは、ソーシャルメディアを市場戦略にどのように取り入れるかを決める必要がある」と述べ、実践例を紹介しつつ、▽どこからでもアクセスできるスマートフォンベースのビジネス基盤を通して、組織のパフォーマンス力を高める、▽自然災害などの予想外の出来事に対して、リアルタイムに対応できる能力を高める、▽モバイルやソーシャルメディアの積極的な利用を通して、支援者と被災者との緊密な関係を築く、などの具体策を取り上げた。
「地域社会と国の変革」をテーマに講演したホーグ氏は、「すべての変革は個人的な変革から始まる」と語り、▽まず私から仕える(Serve)、▽まず私から行動する(Act)、▽まず私から愛する(Love)、▽まず私から考える(Think)、▽まず私から従う(Yield)のSALTY(地の塩)の原則を解説。「まず私から仕える」をさらに具体化したものとして、▽いま置かれているところでリーダーとして行動する(意識改革)、▽新たに始める(継続的変化)、▽共に成長する(人材育成)、▽謙虚になる(姿勢)、▽チームでやる(共働)、▽戦略を立てる(効果の最大化)という、リーダーシップを構成する6つの原則を説明した。
「私たちに他者やコミュニティーを変える力はない」と強調し、「『まず、私から変わる』ことで、変化は自然と起きてくる」と個人の変革を促した。
ホーグ氏は30年以上にわたり、世界各地の貧しい地域で緊急支援や地域の変革に取り組んできた。国際援助のあり方について、「大切なのは、支援プロジェクトの当事者は誰かということ」と語り、トップダウンではなく現地の人々を当事者とする、内から外へ、小から大へと成長する自然界の法則に沿ったプロセスの重要性を強調した。
「何をしたらいいのかの前に、なぜ貧しいのかを考えることが重要」と指摘。「多くの場合、心のもっとも深い部分にある人々の世界観に大切な問題の鍵がある。人々の考え方が真理に基づけば、社会の思考様式は健全になる。解決は援助にあるのではなく、国民一人ひとりの中にある」と述べ、「あなたの考え方一つが国を変えることを忘れないでほしい」と訴えた。