停滞する日本宣教に打開策を見出そうと、「エリヤ会」が17日、東京のお茶の水クリスチャンセンターでシンポジウムを開催した。姫井雅夫氏(総動員伝道代表)、ディル・リトル氏(カナダ福音自由宣教団)、趙南洙氏(招待キリスト教会主任牧師)、稲垣久和氏(東京基督教大学教授)、樋野興夫氏(順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授)の5人の講師が、日本の教会を変えるための具体的指針を提案した。牧師や信徒ら54人が集まった。
姫井氏は、日本にまだ教会の数も、教会員の数も少なかった70年代に総動員伝道が始まり、伝道の方策をみなで相談し、信徒訓練の教材を提供し、教会間の交流づくりに大きく貢献してきた。しかし時代の変化とともに教会の「総動員」が困難になってきた。
日本の土壌を教会がよく研究して(福音の)種をまく必要があると思うが、聖書のせの字も知らない日本人への伝道は、時間と忍耐が必要であるとの見解を示した。
リトル氏は、自殺率が高く、また様々な新興宗教が広がりやすい日本社会はポストモダンの影響を強く受けているとし、その中でイエス・キリストへの信仰が普遍、客観的なものであることを教会が明確に伝える必要があると語った。
趙氏は、日本のクリスチャンの中に、教会は「神がご自身の血をもって買い取られた」(使徒20:28)とする聖書的な教会観を持って、教会を何よりも大事にする心があれば、日本の教会は変わると述べた。
趙氏の教会では、生き生きとした信徒を生み出すために、日々のディボーション(御言葉の黙想と祈り)の指導に力を入れている。「ディボーションの中に神の臨在があれば、次の行動が変わる」と趙氏は語る。
また、「信徒は、牧師がメッセージ通りに行動する姿を見たい」と述べ、まずは牧師が御言葉に生きることで、その姿を見た信徒が変えられていくことを強調。また牧師は人育てであって、一人の魂をどうすればキリストと会わせ、献身に導くことができるのかを知り、実践する必要があると述べた。
趙氏は7年前から、信徒からの祈りの題目をデータ化して整理し、一定期間でその祈りがいくつ実現されたかの具体的な数値を集計して信徒らの前で発表するようにした。祈りの成果が目に見える形で示され、信徒らの祈りの励ましとなっている。趙氏は「神が人生の中で、あなたを生かしている、ここを確認したい」と語り、祈りを通してあらわされた神の御業を信徒らが分かち合うことの重要性を強調した。
稲垣氏は、少子高齢化や自殺、教育現場でのいじめなど、近年高まる「生」の社会的ニーズに教会が手を差し伸べることが重要としたうえで、信徒の賜物を生かして様々な社会の現場に教会が浸透していく必要があると語った。
稲垣氏は、クリスチャンが御言葉に生きることによって、その周りの人々に福音が伝えられるとし、ノンクリスチャンに寛容になれない日本の教会、信徒一人ひとりの固執した姿に問題点があると指摘した。
樋野氏は、「一人の人間が世界を変える」と述べ、たとえクリスチャン人口が1%であっても目先の数字にとらわれることなく、神が日本に与えられた宣教の使命にこそ目を留めることが重要だとした。
講演後の質疑応答では、「牧師のリーダーシップ教育」「ビジネスの信仰的な意味づけ」「帰国者クリスチャン」などのトピックスが取り上げられ、会場と講演者との間で意見交換を行なった。
時代の先にあるものを捉え、教会のこれからを真剣に考える牧師の育成についてコーディネータの三谷康人氏(カネボウ薬品株式会社元会長)は、成長する教会の牧師たちには、海外での牧会、研修経験のある者が多いと述べ、狭い考えの枠に縛られず、世界的な広い視野を持つ牧師を育てるためには海外の教会へ積極的に人材を派遣することも必要ではないかと提案した。また、教会の改革については、牧師、役員双方の理解が必要であり、何よりも「危機感」が考えのベースになければ変わらないと指摘した。
日本の多くのクリスチャンビジネスマンが、「働くことの信仰的な意味づけ」について悩んでいるとの意見があった。稲垣氏は、教会が蓄積された富を再分配する方法を信徒らに示し、働くことの聖書的な意味づけを牧師が信徒に伝える必要があると語った。
帰国クリスチャンの問題について趙氏は、日本で救われる人数と海外で救われる人数がほぼ同数であることからも重要な課題であるとし、日本の教会を改革できるよい機会として、09年の第5回日本伝道会議の主題の1つとなるように働きかけたいとの考えを示した。