クリスチャン小説家・三浦綾子の処女作にして代表作である『氷点』の50周年記念事業として、今年限りで創設された「三浦綾子文学賞」に、全国各地から170作の応募があった。現在、21人の第一次選考委員により第一次選考が進められている。一方、同じく記念事業として今年立ち上げられる三浦文学・三浦綾子のファンクラブ「氷点村」も間もなく会員募集が始まる。
6月末に応募が締め切られた三浦綾子文学賞には、30の都道府県から応募があり、応募者の年齢も20代から90代までと様々。さらに海外からの応募もあったという。
まずは第一次選考で3作を選び、現代詩作家の荒川洋治氏、小説家の加藤幸子氏、ロシア文学者の工藤正廣氏の3氏による最終選考で受賞作が選ばれる。受賞作の発表は11月10日。授賞式は北海道旭川市の三浦綾子記念文学館で12月に行なわれる予定だ。
一方、同賞のための募金も行なわれ、891件で総額約560万円が集まった。
三浦綾子の作家としての道を開いた『氷点』も、三浦が朝日新聞社の懸賞小説に応募したものだった。今回の募集趣旨では、「三浦綾子の作家精神に沿った斬新な視点にもとづき、困難な時代を生き抜くうえで糧となる力作を」としており、受賞作が「第二の三浦」を生み出すのかも期待される。受賞作は、KADOKAWA(旧角川書店)から出版される予定だ。
『氷点』が朝日新聞社の懸賞小説に当選したのは1964年。同年末から同紙での連載が始まり、1966年には出版され大ベストセラー作品となった。その後も映画化やラジオドラマ化、テレビドラマ化され、世界各国でも翻訳され、小説『氷点』は『続氷点』と合わせて810万部を超える不朽の名作となった。
三浦綾子記念文学館では、同賞の他にも『氷点』50周年記念事業として、3連続企画展や朗読会、記念書籍の出版などを行なっている。
3連続企画展はすでに1つ目が終了し、7月からは「原罪」をテーマにした2つ目の企画展を開催中。記念出版では、4月に三浦綾子のエッセイ集『ごめんなさいといえる』と、同館特別研究員で三浦綾子読書会代表の森下辰衛氏による解説書『「氷点」解凍』の2冊を発売した。
さらに、記念事業として創設されるファンクラブ「氷点村」の会員募集が間もなく始まる。世代・国を越えて広がる三浦文学・三浦綾子ファンの交流の場、情報提供・交換の場として創設されるファンクラブで、バーチャル的な存在になるという。会員募集などの詳細は、三浦綾子記念文学館のホームページで告知される。