【CJC=東京】西アフリカのリベリア、ナイジェリア、シエラレオネ、ギニアなどでエボラ出血熱が流行、死者も1000人に近づく現実を受け、各国政府や関係団体が封じ込めの道を模索している。
世界保健機関(WHO)は8日、西アフリカで拡大するエボラ出血熱について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、世界的流行を防ぐため国際協調による対応を呼び掛けた。
WHOは6、7日の2日間、感染者が出ているアフリカ諸国のほか、米仏など約20人の専門家による電話協議を行っており、その結論を受けてのものと見られる。
WHOは、さらなる感染拡大で予想される被害は、ウィルスの毒性を踏まえると「極めて深刻」だと指摘し、「国際的に協調して対応することが、感染拡大を食い止めるために不可欠だ」と訴えた。国際的な緊急事態を宣言したことで、ウイルス拡大に対する警戒レベルが引き上げられることになる。
また、これまでに感染が確認されているギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネ各国に非常事態を宣言すべきだと勧告した。シエラレオネは7月31日、リベリアは8月6日、ナイジェリアも非常事態を宣言している。
一方、WHOは、国際的な渡航や貿易は全面禁止にすべきではないとしている。
ロイター通信によると、ケイジ・フクダ事務局長補は、ジュネーブの本部で開いた電話会見で「これは謎の疾病ではない。封じ込め可能な感染症だ」と述べ、空気感染するウイルスではないと強調した。
しかし特効薬が確認されていない現状では、流行地との人的物的交流を遮断する動きも出ており、波紋を広げている。
南部アフリカのザンビアは11日までに、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネ、ギニアの各国民が入国することを禁じる措置をとった。
チャドはナイジェリアからの全航空便の乗り入れを中止した。これらの措置を受け、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とエミレーツ航空は流行国への運航を取りやめた。
流行国からの代表団参加を拒否する国際会議も出ている。韓国の徳成女子大学と国連女性機関「国連ウィメン」がソウルのロッテホテルで共同開催した「第2回次世代女性グローバルパートナーシップ世界大会」に参加予定だったナイジェリアの大学生3人が、エボラウイルス感染の恐れがあるとして招待を撤回された。3人は国連人権委員会に提訴する構えだいう。
流行に収束の兆しが見えない中、医療従事者らからは封じ込めに向けた緊急支援を要請する声が相次いでいる。
現地では、赤十字社、「サマリタン・パース」などが救援に当たっているが、感染者を治療する緊急医療援助団体「国境なき医師団」(MSF)は「対応能力は限界。これ以上多くの感染地に対応できない」とし、各国政府と援助団体による大規模な対策を求めるメッセージを出した。
MSFのメッセージによると、今回の流行は地理的分布と感染者、死者数の点で過去に例を見ない規模で、患者が確認された場所は3カ国で計60カ所を超えた。さらに他の地域へ拡大していくリスクが高いという。
MSFのウォルター・ロレンツィ氏は「今回の流行は過去に例がなく、制御不能」とし、「現場では人員が今すぐにでも必要となっている。それはオフィスの中や会議室ではなく、ゴム手袋をはめた人たちだ」と訴えた。
ロイター通信によると、ナイジェリア保健省は6日、同国でエボラ熱により先月死亡した米国籍のパトリック・ソーヤー氏の治療に当たっていた看護師が死亡したと発表。別の5人もアフリカ最大都市でもあるラゴスの隔離病棟で治療を受けていると言う。
ラゴスの保健当局は、医師がストライキを行っており、ソーヤー氏に接触した70人を追跡するため、ボランティアが直ちに必要だと指摘。これまでに追跡できた人数は27人だとしている。
サウジアラビア保健省は、出張先のシエラレオネでエボラ熱に感染した疑いがもたれていた男性が6日に死亡したと明らかにした。
死者の数が最も急速に増加しているリベリアでは、院長がエボラ熱により死亡した病院が閉鎖された。多くの住民がパニックに陥っており、政府当局の指示を無視し、遺体を路上に放置しているケースもあると報じられている。