富雄は、金鵄(きんし)発祥の地という鵄邑(とびのむら)であり、そこから鳥見郷(とりみのさと)・鳥見庄(とりみのしょう)となり、この地を流れる富小川(とみのおがわ)にちなんで、富雄と呼ばれている。『新千載集』には「いかるがや富小川の流れこそ絶えぬみいつのはしめなりけり」と歌われている。
この地にある教会として、金の鵄(とび)ではなく、聖書の鳩が臨み、リバイバルの光を全世界に放つ教会となることを祈っている。またこの小さな富雄川の流れが、旧約の預言者エゼキエルが見た幻の川のように、聖霊の流れを豊かに流し出す群れとなることを確信している。
現在の富雄キリスト教会は、一九八四年に移転した場所に建っている。この時は土地の購入と建築のため、生まれて初めて借金なるものを経験した。最初は相手にしてくれる銀行もなかったが、土地の売り手が保証人になってくれたので、銀行はすぐお金を出してくれた。
しかし牧師の強い信仰の決断に、不満をもつ信者も数人あった。そして自分たちは責任をもてないと、新しい教会の完成とともに、教会から去っていった。
私はコミュニケーションが下手で、口数も少ない。また本音で説教を語っているので、みんなが礼拝で「アーメン」と応答したら、それでよいと信じていた。しかも結論はあるがプロセスがないため、信仰によって会堂を建設すると言えば、教会が建つと思っていた。実際にそうなのだが、もう少しお金の集め方とか、返済方法のプロセスを話し合うことも必要だったかも知れない。
しかし信仰と希望と愛の中で、牧師を信頼し、理解し、祈ってくれる信者も少なくなかった。労苦をともにしてくれた信者たちには、どのようなことばでもっても感謝を表明することができない。彼らの祈りと支えによって、富雄キリスト教会は常に前進している。ちなみにあれほど問題になった借金は、十年目に全額返済するという恵みを与えられた。感謝!
(C)マルコーシュ・パブリケーション
◇
榮義之(さかえ・よしゆき)
1941年鹿児島県西之表市(種子島)生まれ。生駒聖書学院院長。現在、35年以上続いている朝日放送のラジオ番組「希望の声」(1008khz、毎週水曜日朝4:35放送)、8つの教会の主任牧師、アフリカ・ケニアでの孤児支援など幅広い宣教活動を展開している。
このコラムで紹介する著書『天の虫けら』(マルコーシュ・パブリケーション)は、98年に出版された同師の自叙伝。高校生で洗礼を受けてから世界宣教に至るまでの、自身の信仰の歩みを振り返る。