【CJC=東京】カトリック教会典礼暦で「王であるキリスト」の大祝日を迎えた11月24日、バチカンで「信仰年」の閉幕ミサが教皇フランシスコによって行われた。
サンピエトロペトロ広場でとり行われた閉幕ミサには、世界各国から約6万人の信者が参加した。教皇フランシスコを囲み、カトリック東方典礼をはじめ多くの枢機卿・司教らが儀式を共同司式した。
ミサでは、初めて使徒ペトロの聖遺物(遺骨)が祭壇にもたらされた。この聖遺物箱は、普段はバチカン宮殿の教皇官邸の聖堂に保管されている。ミサ中の献金は、台風で膨大な被害を受けたフィリピンの被災者におくられる。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はミサの中で、「信仰年」を締めくくるものとして、使徒的勧告『エヴァンジェリ・ガウディウム』(喜びの福音)を、5大陸の教会と社会を代表する36人に手渡した。その内容が26日発表された。
使徒的勧告は、「福音の喜びは、イエスに出会う人々の心と全人生を満たします」という言葉で始まる。教皇フランシスコは現代の世界に福音を告げるための考察を展開すると共に、2012年10月にバチカンで開催された「キリスト教信仰を伝えるための新しい福音宣教」をテーマにした第13回通常シノドス(世界代表司教会議)の成果を活かし、取り入れている。
この使徒的勧告で、教皇は「これからの教会の歩みの道のり」を、主に五つの観点から示した。
(1)「喜び」に特徴付けられる「福音宣教の新しい一歩」をしるすよう招いている。教皇はすべての信者に、自分の人生で体験したイエスの愛、その喜びと友情を新しい熱意と活力をもって他の人々に告げるよう、キリスト者の恒久の使命を強調している。
(2)福音本来の新鮮さを取り戻すことから始まる、「創造力と大胆さをもった刷新」を呼びかけている。このために教皇は、司牧・宣教上の回心と、教会がより宣教的になるための構造改革の必要を述べている。そして、この司牧的回心は、小教区、司教、教皇に至るまで及ぶべきものとしつつ、教会の合議性をより高め、より良い宣教・教会活動のために必要以上の中央集権制、聖職者主義などを見直し、地方教会の貢献を活かすと共に、信徒や女性の役割を広げることを提案している。
(3)「より開かれた、受け入れの心と慈しみある教会」へのアピール。教皇は教会の扉は開かれているべきとし、教会は慈しみの場であり、断罪の場ではない、神は赦すことにおいて疲れを知らないと記している。皆が秘跡に近づきやすいようにし、教会は「関所」ではなく、誰もが疲れた時に自分の場所を見出せる「父の家」でなくてはならないとする。福音を告げることにおいて、そこには寄添いと、尊重、同情、成熟に向けた忍耐があるべきであり、司祭の説教も単なる道徳主義・教化主義に陥らず、常に希望を与えるものであるよう願っている。
(4)「対話と出会い」。教皇は他のキリスト教教会、また諸宗教、そして無宗教の人々との対話を促している。その対話は「明確なアイデンティティーと喜び」に裏付けられたものであり、福音宣教を曖昧にするものではない。教皇は特に今日においてイスラム教との対話を、非常に大きな重要性を持つものとして注目。イスラム伝統国でキリスト教徒の信仰の自由が守られると共に、欧米においてイスラム教徒がその自由を享受できるようにと希望されている。
(5)「教会は預言的な声」であるべきであり、たとえ反対の風潮の中でも、勇気を持って話すことが要求されるとする点。教皇は教会が「貧しい人のための、清貧な教会」であるよう説いている。「強者の論理」が勝る現在の経済システムを根本から正しくないものとして訴え、切捨て、拒否される人々への関心を、政治家や教会共同体に呼びかけている。教会が守るべき存在として、特に生まれてくる子どもたちの命、家庭の絆を挙げている。