献品の山に嬉しい悲鳴
このようにして、92年から93年にかけてマスコミで大々的に報道されたため、教会やクリスチャン以外の全国の方々からも、毛布、古着、食料品等の献品が続々と送られてくるようになりました。
北海道の方からは肉が箱一杯、大阪の方からは新品のメリヤス下着2000着、鳥取の方からは「今、船が入港したので、獲れたての魚を送ります」との電話。長野の方は味噌を10年分、毎月小分けにして送って下さっています。NHK番組を見たあるお寺のお坊さんは、クリスチャンになりました。その後、ラーメン屋を開業して30万円分ものうどんを送ってきてくれました。匿名で、一度に800人分のうどんを送って下さった方もいました。神様は、その方の善行を覚えておられます。こうして、献品は途切れることがなくなり、炊き出し材料は買わずに済むようになりました。
山谷の教会も北千住の教会も、狭くて小さい。そこへ連日のように、一度に数十箱もの献品が届くのだから、皆嬉しい悲鳴を上げていました。礼拝や祈祷会の後、出席者に配るのですが、それでも余るので保管スペースを作らなければなりません。
そのため主人は会社を退職して、早朝から晩まで礼状書きと保管スペース作りに追われました。手抜きや手加減のできない性分の人なので、仕事を始めると三度の食事も忘れて、力尽きて倒れるまで働いてしまいます。こういう人は今まで見たことがありません。その、腕っぷしの強いことといったらありません。おまけに緻密です。一晩で保管棚を作り上げ、数百枚もの毛布を、寸分の誤差もなくきっちりと一直線に積み上げてくれたのには驚きました。あの技は、誰にも真似できないでしょう。世界中どこを捜しても、こんなお父さんはいません。
山のような献品のため、山谷の教会の2階はついに床が抜けそうになりました。その修理費が与えられるように必死で祈ったところ、ほどなく韓国の教会に講師として招かれました。その時の謝儀で、修理費をそっくり賄うことができました。
クリスマスの1週間前は、特に献品が集中しました。93年のクリスマスには、衣類、毛布、食料のほか、ショートケーキや寝袋500枚(トラック1台分)が届きました。その年も、例年のように1週間前から炊き出しの準備に取り掛かりました。牛肉煮込み、赤飯など1000人分を作り、たくさんの方々が手伝いにきて下さいました。オペラ歌手の辻敦子さんは1時間特別出演し、賛美をしてくれました。路上に並んだ400人近い人々だけでなく、町内の人々も静寂の中を聴き惚れていました。
会堂の前の路上にまで溢れる献品の山を見て、与えられた使命を黙々と忠実に果たしていくなら、神様が天の窓を開いて下さり、押し入れ、揺すり入れるようにして、恵みを注いで下さるのだとしみじみ思いました。(続く)
森本春子(もりもと・はるこ)牧師の年譜
1929年 熊本県に生まれる。
1934年 福岡で再婚していた前父の養女となる。この頃、初めて教会学校に通い出す。
1944年 福岡高等簿記専門学校卒業。義母の故郷・釜山(韓国)に疎開。
1947年 1人暮らしを始め、行商生活に。
1947年 王継曽と結婚。ソウルに住み、三男二女の母となる。
1953年 朝鮮戦争終息後、孤児たちに炊出しを続け、17人を育てる。
1968年 ソウルに夫を残し、五児を連れて日本に帰る。
1969年 脳卒中で倒れた夫を日本に連れ帰る。夫を介護しながら日本聖書神学校入学。
1972年 同校卒業、善隣キリスト教会伝道師となる。山谷(東京都台東区)で、独立自給伝道を開始する。
1974年 夫の王継曽召天。
1977年 徳野次夫と再婚。広島平和教会と付属神学校と、山谷の教会を兼牧指導。
1978年 山谷に、聖川基督福音教会を献堂。
1979年 この頃から、カナダ、アメリカ、ドイツ、韓国、台湾、中国、ノルウェーなどに宣教。
1980年 北千住(東京都足立区)に、聖愛基督福音教会を献堂。
1992年 NHK総合テレビで山谷伝道を放映。「ロサンゼルス・タイムズ」「ノルウェー・タイムズ」等で報道され、欧米ほか150カ国でテレビ放映。
1994年 「シチズン・オブ・ザ・イヤー賞」受賞。
1998年 「よみがえりの祈祷館」献堂。
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