また「キリストを着た新しい人」という言葉の意味についてロダール氏はⅠコリント15章3節~8節を引用し、「キリストが聖書に従って三日目に蘇られた後、ケパに現れ、それから12弟子たちに現れたと書かれてあるが、ここでは何人かの人が省かれてしまっている。4つの福音書すべてにおいて書かれてあることは、イエス様が復活された時に最初に姿を見せた相手は『女性であった』ということ。これは偶然起こった出来事ではない」と説いた。
使徒の働き10章41節には三日目に蘇り姿を現したイエスについて「すべての人々にではなく、神によって前もって選ばれた証人である私達に」対して現れたことが記されてある。ロダール氏は「復活された後姿を現した相手は、偶然にその人に姿を現されたのではない。神によってイエス様と出会うように願われて、使命を与えて(復活されたイエス様との)出会いを与えておられる。ただ偶然会って別れたのではない。最初にまず女性に現れたということは、そのような目的をもって(復活されたイエス様と女性の)出会いを与えてくださったということ。女性たちが偶然にその時間に復活されたイエス様の場所にいたからではなく、神様の素晴らしい働きの結果である。復活されたイエス様が最初に姿を現されたのが、男性たちではなく女性たちであったということは、初代教会の男性たちにとっては、ちょっと恥ずかしいことのように思えたかもしれない。当時のユダヤ人社会では、女性の証言はほとんど意味を持たなかった。もしイエスの復活が作り話であったなら、『最初の発見が女性であった』ということは(当時の社会常識から)絶対にあり得ない。男性が発見したと書いた方が、信憑性が高い。しかし福音書の記者はそのようには書いていない。なぜならそれが事実だからである」と説いた。
ロダール氏はイエス・キリストの復活後、キリストにあって男と女の区別がなくなったことについて「すべて男も女もキリストの形として創られているということが重要。男性であっても女性であっても、世界の人々に対して『神様の愛を映し出していく』という使命を担った者であるということ。現代社会を作り上げてきた制度というものは、大体が男性が作ってきたものである。そのため『男性の生き方はこういうもの』、『女性の生き方はこういうもの』と思われてきましたが、そのような制度もキリストにあっては意味がない。『そのような違いはない』という使い方をもって『男も女もない』と書かれてあるのではないでしょうか。この福音の真実に基づいて生きるというのは、男性にとって難しいというだけでなく、女性にとっても同じように難しい。本当に自分のものにするのは困難なこと。世俗の文化的なことが、すべて間違っているわけではない。しかし、そういう価値観にチャレンジして、この世の価値観を福音が超えるものであって、この世の価値観に支配されずに新しい着物を着て生きて行くことができるということが大事である」と説いた。
幸いなのは、神のことばを聞いて守る人たちである
さらにロダール氏はルカ11章でイエスに対し「あなたが産んだ腹、あなたが吸った乳房は幸いです」と言った女に対し、「幸いなのは、神のことばを聞いてそれを守る人たちです(ルカ11・28)」とイエスが答えたことに対して、「当時の価値観や考え方を壊された実例が書かれてある。当時の女性に対する価値観、考え方を打ち壊す考え。ユダヤ人の若く素晴らしい教師を産んだ母の幸いを言い表し、女性がイエスの母を賛美した。女性としての生が与えられ、子供を産むということができることは素晴らしいことである。しかしイエスは『幸いなのは神の言葉を聞いてそれを守る者である』と答えられた。子供を産んで育てて行くことで祝福されると考えられていた女性に対して、イエスはその考えを新しくされ、全く違う観点へと女性の考えを導かれた」と説いた。
ロダール氏は「ユダヤ教社会において『神の言葉を聞いて守る』のは男性の役割であり、教えを学んだのも男性であった。女性の役割は専ら『子供を育てる』というのが当時の考え方であった。しかしイエスはそのような考え方を全く覆され、『幸いなのは神の言葉を聞いて守る人である』と教えられた。そこには男と女の違いはない。私達は皆、キリストにあってひとつである。私達こそこの言葉に従う者でありたい」と伝えた。
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マイケル・ロダール博士:米ノースウエスト・ナザレン・カレッジ、ナザレン・セオロジカル・セミナリーを経て、エモリ―大学で哲学博士号を取得。ノースウエスト・ナザレン・カレッジに続き、1999年から現在までポイント・ローマ・ナザレン・カレッジ(米カリフォルニア州サン・ディエゴ市)で神学と宗教学の教授として、組織神学・歴史神学・世界宗教を担当。同氏の著書の邦訳「神の物語」は国内キリスト教界で大きな反響を呼んでいる。
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