心を合わせて祈る時に
ある日、腰痛の男性が、癒やされたい一心で杖をつきつきやって来ました。祈ってあげる前に、私はこう聞くことにしています。
「イエス様は十字架にかかられて、あなたの罪を赦されたんですよ。このイエス様を救い主として信じますか」
その人は、涙を流して「信じます」と告白しました。そこで横にならせて、服の上から私の手を置き、癒やしを求めて祈ると、神様はその手を移動させなさり、ツボに触れさせて下さいました。教会員たちもこの人の周りを囲んで、心を合わせて祈りました。
使徒行伝3章には、物乞いをしている足の不自由な人が登場します。ペテロはこの男に、「金銀はわたしには無い。しかし、わたしにあるものをあげよう。ナザレ人イエス・キリストの名によって歩きなさい」と宣言します。この力ある宣言とともに、男の右手を取って起こすと、男は即座に立って歩き出しました。このペテロの右の手は、信仰の手、勝利の手、愛の手です。私たちも聖霊に満たされ、キリストの御名によってみことばを宣言するなら、その右の手を通して奇跡が起こります。
私も使徒行伝3章に従って宣言しました。
「ナザレ人イエス・キリストの名によって命じる。腰の痛みをもたらすサタン、出て行けっ!」
そして腰をバシッと叩くと、彼はすぐに起き上がって、「あれ、あれ、嘘みたい」と言いました。痛みが消えてしまったのです。この人は、語られるみことばを単純にそのまま信じる信仰によって、罪赦されて復活の命が流れ込み、救われると同時に癒やされたのでした。
人は、肉体と心と霊からできているので、人の罪を赦す権威を持つイエス様は、霊魂の救いだけにとどまらず、病を癒やすことによって肉体も救い、悪霊からも解放して下さいます。
「病人に手をおけば、いやされる」(マルコ16・18)
神が語られるこの聖句を、確信した人なら癒やされるのです。ただ、癒やしの祈りが聞かれるためには、病人は、是非とも癒やされたいという思いが火のように燃え上がらなければなりません。
祈る人も、この病人は絶対に癒やされるとの確信に立って祈ることです。さらに、聖霊様の御心と一致しなければなりません。この三条件が一体になって、そこに愛の火花が散った瞬間、癒やされるのです。
教会には、病気の人々が「溺れる者は藁をも掴む」の心境で続々とやって来ました。まれに、癒やしを求める気が起こらないという病人もいます。でも何とか癒やしてあげたい、救われて欲しい、地獄のような境遇から立ち直って欲しいとの思いが、私の中に火のように燃え上がるのです。だから、そういう煮え切らない人の首根っこを捕まえるようにして、教会に連れて来ます。
「あなた。癒やされなかったらどうするの!こんな惨めな悲惨な状態で、人生を終わりたいの!そこに座んなさい。祈ってあげるから、癒やされると信じなさい」
単に「信じなさい」と言うのではなく、信仰の先取りをさせます。回復の兆候がまだ見えなくても、「イエス様を救い主、癒やし主として信じました」と告白させるのです。それから癒やして下さった神様に、力一杯栄光を帰すため、全身全霊でもって「アーメン」(主は真実です)、「ハレルヤ」(主をほめたたえます)と言わせます。
こうなると、病気の悪霊は逃げ出して近寄ることができません。そこに、癒やしの御業が現れます。これがリバイバル(信仰復興)の原点です。
寒い冬の日のことでした。這いながらやって来る人がいました。仕事で怪我をしたのが原因で、足がパンパンにむくんでしまったのです。彼は、激痛のため蒼白になった顔を歪めながら訴えます。
「先生。助けてくれよ。足が痛くて、痛くて」
私は、思わずその足を抱きかかえると、周りの教会員に呼び掛けました。
「皆さん、祈って下さい。祈りましょう」
「全能なる神よ。あなたの愛と憐れみの御手でもって、彼のこの足に触れて癒やして下さい」
皆が心一つにして、信仰をもってささげる祈りは、一人の祈りよりも力があり、全知全能の神の御手を動かすことができ、そこから様々な神の業が起こります。その事実は使徒行伝の中にも記されています。
たとえばパウロとシラスが投獄されていた時、教会員が祈り合っているうちに、神様が地震を起こされ、二人の手錠が外れてしまい、奇跡的に解放されました(使徒行伝16・26)。そして、祈りの霊でもある聖霊に満たされると、祈らずにいられなくなります。
もう、祈って、祈って、祈って・・・・・・どれほど祈ったことでしょうか。祈り終わった途端、何と患部の一部に小さな穴がポッカリ空き、そこから膿がどんどん流れ出て来た。押し出すと、コップ2杯分にもなり、最後に5センチほどのどろっとした膿の塊が出て来ました。こうして、瞬間的に癒やされた彼は感動のあまり、おいおい泣き出しました。
「・・・・・・先生。ありがとう」
「ちょっと待って。私が治したんじゃないのよ。イエス様に感謝しなさいよ」
彼は、喜んでイエス様を救い主として受け入れ、一同、主の癒やしの御業を「ハレルヤ」と声を揃えて讃えました。
それにしても使徒行伝を読むほどに、「まずは祈りをもって始めた、このような初代教会に帰れ」と仰るイエス様からの、力強いチャレンジを受けないわけにはいきません。
使徒行伝は「聖霊行伝」とも呼ばれ、初代教会の成り立ちと三十数年の歩みとが見事に描かれています。聖書六十六巻の中で、ただ一巻だけ「未完成行伝」とも言われます。
私はその続編は、この時代において山谷の教会でも進行中だと敢えて言いたいです。不況下を黙々と耐えながら、病める人、聾唖者などが、霊肉の救いを求めて這いつくばるようにしながらやって来ては、次々と癒やされているからです。その奇跡を体験したり目の当たりにした人々は、キリスト以外には救いがないことを知って、洗礼へと導かれています。
この日本で、心身の萎えた人々を立ち上がらせるには、初代教会に注がれた聖霊の火、復活の命、生ける神の力を受ける以外にありません。どんなに完璧な神学を説いても、それだけでは人を救い、癒やすことはできません。(続く)
森本春子(もりもと・はるこ)牧師の年譜
1929年 熊本県に生まれる。
1934年 福岡で再婚していた前父の養女となる。この頃、初めて教会学校に通い出す。
1944年 福岡高等簿記専門学校卒業。義母の故郷・釜山(韓国)に疎開。
1947年 1人暮らしを始め、行商生活に。
1947年 王継曽と結婚。ソウルに住み、三男二女の母となる。
1953年 朝鮮戦争終息後、孤児たちに炊出しを続け、17人を育てる。
1968年 ソウルに夫を残し、五児を連れて日本に帰る。
1969年 脳卒中で倒れた夫を日本に連れ帰る。夫を介護しながら日本聖書神学校入学。
1972年 同校卒業、善隣キリスト教会伝道師となる。山谷(東京都台東区)で、独立自給伝道を開始する。
1974年 夫の王継曽召天。
1977年 徳野次夫と再婚。広島平和教会と付属神学校と、山谷の教会を兼牧指導。
1978年 山谷に、聖川基督福音教会を献堂。
1979年 この頃から、カナダ、アメリカ、ドイツ、韓国、台湾、中国、ノルウェーなどに宣教。
1980年 北千住(東京都足立区)に、聖愛基督福音教会を献堂。
1992年 NHK総合テレビで山谷伝道を放映。「ロサンゼルス・タイムズ」「ノルウェー・タイムズ」等で報道され、欧米ほか150カ国でテレビ放映。
1994年 「シチズン・オブ・ザ・イヤー賞」受賞。
1998年 「よみがえりの祈祷館」献堂。
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