世界教会協議会(WCC)から国連持続可能な開発会議(UNCSD、通称「リオ+20」)に参加した代表団は、他宗教団体指導者らと共同で、同会議公式声明文の内容を非難する声明を発表した。
南米で解放の神学者として知られているリオデジャネイロ州立大学(UERJ)教授のレオナルド・ボフ氏は、「1992年から2012年の間、実践的には公共政策およびグローバルなコミットメントとして何も進展がなかったと多くの有名な環境科学者たちは言っています」と述べている。同氏は今回の会議が終了間近になった頃にこのような結論を発表した。
ボフ氏は今回の国連会議の大衆的な要素をもったカウンターパートとして開催されたピープルズ・サミットに参加していた。同サミットは6月20日から22日までブラジルリオデジャネイロで開催されていた。
WCC中央委員会モデレーターのウォルター・オルトマン博士とともに、ボブ氏はピープルズ・サミットイベントの中の「気候変動の正義のための倫理的・神学的基盤」というセミナーの共同議長を務めた。
今日の生態系に関連した人類の生活形態について、ボブ氏は「私たち人類が行くところどこででも、私たちは破壊をもたらし、他の生命体が避難せざるをえない状況を作り出しています。地球のどこででも経済を優先とした思考が支配するとき、飢餓や貧困・搾取の問題が生じます」と遺憾の念を露わにした。
オルトマン博士は今回の会議で国際的な諸団体・組織による戦略的な連携が明らかに欠けていたことに遺憾の念を表し、地域レベルでの宗教共同体、その他市民社会団体の役割の潜在力について言及した。
同氏は「1992年の会議では、今回の会議よりももっと市民社会団体との対話が活発に行われていました。宗教共同体は特に私たちの惑星が直面している危機に対し声を上げていく使命があります。より人類の精神的、倫理的な次元に迫っていかなければなりません」と述べた。
オルトマン博士とボフ氏が共同議長を務めた同セミナーはピープルズ・サミットで開催された80の行事の一環として行われた。同サミットは、エキュメニカルかつ諸宗教の信仰者らが協力して「諸宗教の権利」を提唱するために行われた。同サミットにおいては、世界中さまざまな信仰者らの間で創造的な交わりの場が提供された。
WCC創造物への配慮と気候変動の正義プログラムエグゼクティブのギラーモ・カーバー博士は今回のリオ+20の結果について、宗教者らがこれだけでは不十分であり、より実際的に有効な具体策が必要であることを訴えていく必要があると強調し、「リオ+20の結果は、現在の地球上の被造物が直面している脅威が緊急の問題であることを反映したものであるとは言えません。前回の国連会議でのコミットメントを更新することができず、特に1992年の地球サミットで生態系の多様性、砂漠化および気候変動の正義に対応して行く分野についての更新が不十分です。一切新しい具体的な将来の地球のための対応策が打ち出されませんでした」と遺憾の意を述べた。
同氏は今回の会議結果について「WCCでは同会議の声明文の序文において明白は倫理的な基盤について触れることを呼び掛けてきました。しかし今回の会議終了の声明文ではこの観点に欠けています。国連は今回の会議においていかなる議論の的となる問題も避けることで必要最低限の共通の方針を選択することで各国の合意に辿りつくことしかできませんでした。その結果地球が打撃を受け、貧しい人々、被害を受けやすい被造物が打撃を受けることになってしまいました。今後の地球環境の保護に対して積極的に対応していく決意に欠けた声明文は、他の金融問題、経済危機の問題に対応する会議声明文と同様にWCCとして受け入れられるものではありません」と述べた。
同会議のカウンターパートとして開催されたピープルズ・サミットの代表者らは、会議開催期間中に国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏と会合を行い、リオ+20声明文に対する不満を表明した。
キリスト教人道支援団体「ACTアライアンス」の加盟組織であるエキュメニカルな奉仕団体コイノニアのエグゼクティブディレクターを務めるラファエル・ソアレス氏は潘基文氏に対し、「今回の会議は国連加盟各国指導者の方々が将来の課題に対して具体的な変化を示していかなければならないものでした。ピープルズ・サミットでは今回のリオ+20の最終声明文を今後の地球環境保護のための効果的な具体策が記されたものとしては受け入れられません」と述べた。
ドイツのルーテル福音教会司祭のヘインリッチ・ベッドフォールド・ストローム博士は、信仰者らが今後も継続して地球環境破壊の問題に取り組む必要を提唱していくことに努力していく必要があるとし、「宗教は人々の精神と心を左右するものです。ですから今私たちが必要としていることは宗教面と世俗社会の両面において公共の神学を発展させていくことです。世界を変えて行くためにはインスピレーションとインセンティブが不可欠です。私はあまり悲観的にはなっていません。私たち宗教者は世に多くの価値観を提供することができます」と述べた。
ブラジルルーテル告白福音教会(IECLB)代表のネストル・パウロ・フリードリッヒ博士は、「今回リオデジャネイロでは、リオ+20とピープルズ・サミットの距離感を感じるに至りました。グローバルな対話において市民社会団体がさらに参加していく緊急の必要があることを感じさせられました」と述べた。
南米平和のための諸宗教共同コーディネーターでアルゼンチンコルドバムスリム・アラブ・ソサイエティー代表者のソハ・エル・スカリア氏は宗教者らが環境保護、貧困者を助けるために協力して活動していく必要があることを強調した。
WCCの創造物への配慮および気候変動の正義プログラムでは、今後も国連が持続可能な開発、環境保護について具体的な対策に取り組んでいくようアドボカシー活動を継続して行っていく方針であるという。またピープルズ・サミットで形成された宗教団体・社会団体による活動にも継続して参加して行く方針であるという。