ウィリアムズ博士は8日カンタベリー大聖堂で、「近年宗教を悪用した多くの行為に対しての糾弾がなされており、そのようなことに聞き慣れていまい、遺憾に感じながら多くの方々が過ごされてこられたと思いますが、今日においてそのような宗教に対する嫌悪感が多少和らいできたことが感じられています」と述べた。
ウィリアムズ博士は3月16日に、今年度を区切りに大主教の座を退くことを発表しており、今年度の復活祭の説教はカンタベリー大主教として最後のメッセージとなった。
英国内では著名なエコノミストらが最近になって経済動向、特に最近の景気後退の原因について、「宗教的な思考なしには英国の冷笑的で退廃的な経済動向はさらに無関心のまま進んでいくだろう」と指摘していた。ウィリアムズ博士は英国内の経済動向と宗教について楽観的な視点を伝え、「宗教的なリバイバルなしには、この経済動向の潮流は深刻な状況になり、飽くなき物欲や個人の欲望が、限られた資源の中に置かれた国際的な正義やリアリズム、社会的な結合に関する議論を呼び起こしている今日の社会において、人類の活動がどうあるべきかのモデルとして、宗教が潜在的な助け手としての役割を果たしていくことが期待されています」と述べた。
英国聖公会では、教会が同性愛を認めるかどうかの大きな議論が生じている。英国内キリスト教保守派団体らは、同性愛を認めるべきではないとしているが、英国内のリベラル派団体は、教会が法律の変更に頑なな姿勢を示していることを批判している。
英国内宗教専門家らは、ウィリアムズ博士の後継となる次期カンタベリー大主教は英国聖公会の一致を保つのにとりわけ困難を極めることになるだろうと懸念を示している。英国聖公会はアングリカン・コミュニオンというおよそ8千万人の世界信仰共同体を有しており、その多くはアフリカに存在している。英国内ではキリスト教徒全体に対する頑なな倫理観についての批判が高まっており、女性司祭の任命についても議論が生じている。
ウィリアムズ博士は、英国聖公会において、特に若い信徒の中で変化が生じてきていることを取り上げ、「これまでの歴史の中でも宗教教育の役割が低評価されている最悪の瞬間が訪れている中にあって、その傾向が徐々に弱まりありつつある」とし、英国内で最近宗教教育が学校教育カリキュラムの中において重要な役割をなしえているかどうかの議論が高まっていることを指摘した。英国内では教会と英国政府が教育においても対立しており、宗教教育が公立学校の人道教育の中に含まれるべきであるとする宗教教育擁護者が多く存在する一方、英国政府は公立学校での宗教教育を認めない姿勢を示している。
ウィリアムズ博士は「最近の英国の若者の中で主の祈りを知っている人が少なくなっていることに対して霊的な呻きを感じますが、一方で若者たちの間で教会に通わなくなっている人が多くなっているものの、信仰に対する敵意もなくなってきている傾向が見られます。若者たちが宗教について学ぶ機会をどのように形成していくべきか真剣に考えていかなければなりません」と述べた。
2月中旬に行われた世論調査では英国人のおよ75パーセントがキリスト教を信じてはいるものの、実際の宗教活動や信仰への関わりはあまり持っていないことも示された。