電力自由化が行われ、住民がそれぞれ使用する電力会社を選ぶことができるドイツと比較して、環境エネルギー政策研究所主任研究員の山下氏は「日本でも電力の自由化が行われて行くべきである」と提言した。
その他再生可能エネルギーの持つポテンシャルについても、各地域でプロジェクトを立ち上げ、環境エネルギー事務所を構えることで、自分でプロジェクト出来ることを育てていくことが必要であると述べた。
また発電分野では「北海道の自然エネルギーのポテンシャルを効率的に利用していくことが必要であり、これまで各電力会社は、それぞれの地域で独占して電力を安定供給してきたが、他の地域への送電は手出ししていなかった。(それぞれの地域間の電力会社の)連携線が非常に細く、非常時しか使わないようになっている。北海道の中だけでは(自然エネルギーの)ポテンシャルはあっても、他地域との連携線が細く、融通が利かないという問題がある。東北電力までしっかりと連携線をつなげることで、大きな電力市場ができる」と提言した。
また国内風力発電の現状についても、電力会社による系統制約(過小な総量規制、裁量手続き)、社会的課題(鳥、景観、低周波)、技術的課題(建築基準法、系統連系)、国のRPS制度(小さい目標値、効果低)の四面楚歌に直面している状態で、停滞を余儀なくされてきたと指摘、太陽光発電についても世界的に急拡大する中にあって、日本のシェアが2005年には47パーセントであったのが、2009年には12パーセントまで縮小しており、その原因として国の太陽光発電を行うための明確な政策不在が挙げられるのではないかと指摘した。
山下氏は自然エネルギーが今後普及していくために、必要な政策や制度を整えて行くことが必要であるとし、そのために1.長期的な高い数値目標、政治的なコミットメント、2.透明で安定した市場を創る(固定価格制・発送電分離など)、3.需要プルの視点で市場の障害を取り除く(水利権、地熱利用、漁業権など、既存の権利関係の整理・統合など)、4.化石燃料等への補助金を段階的に廃止し、外部コストを内部化していく(炭素税や電気料金上乗せなど)、5自然エネルギーの恩恵が地域へ入る市民参加・地域参加の仕組み(地域出資、市民ファンドや地域エネルギー事務所など)を作って行くことが必要であると提言した。
また今後長期的な視点で再生可能エネルギーを拡大し、電力自由化をして行くことの重要性について山下氏は、これまで自然エネルギーが抑制されてきた一方、世界での自然エネルギーは本流化しており、新しいエネルギー戦略策定への論点が高まっていること、電力を自由化することが、自然エネルギーの拡大に必ずしもつながるわけではなく、電力自由化とはどういうことか、海外事例から教訓を受け、きちんとした規制を策定していくこと、制度とインフラの両面から段階的に変革し、地域分散型を活かす電力自由化の仕組みを策定していくことが必要であると指摘した。
前ページはこちら