同ハンドブックにおいてWCCとILOは、世界諸宗教共同体が、いかに社会的に安全で保護された環境下で、人々が生活し、労働できるために貢献できるかの指針が書かれている。他にも福音と教会の社会教説に即した正義と平和の実現を促進する機関(PCJP)やイスラム教育科学文化機関も同ハンドブックの作成に携わっている。
同ハンドブックでは、ILOのディーセント・ワーク・アジェンダ(DWA)において労働における結束と安全を模索する概念が表明されており、社会正義、労働の品位、経済的権利に関する諸宗教の伝統が果たす役割についての記述がなされている。
ILOのフアン・ソマヴィア事務局長は「オラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事と2010年にお会いした際、私たちはお互いにそれぞれの機関が平和と社会正義、世界の労働がそれぞれ関わり合う中で共通の方向性をもって取り組んでいくべきであることを感じました。このハンドブックはその際互いが出会って感じたことの実りであるともいえます」と述べている。
同ハンドブックでは、カトリック、プロテスタント、イスラム教、ユダヤ教、仏教などあらゆる伝統宗教が公正なグローバル化のために果たすべき役割や労働の価値に対する取り組みについて説明がなされている。
社会正義という諸宗教が懸念する共通の項目について取り組むべく、ソマヴィア氏によって「人間の尊厳、結束そして労働と社会正義の関わり合いにおけるつながりという共通の土壌」について説明がなされている。ソマヴィア氏は「このハンドブックは(社会正義の取り組みにおける)最初の一歩です。私たちそれぞれの共通の価値観の上に社会正義が立てられる新たな時代の夜明けを見ることができることを楽しみにしています」と述べている。
トゥヴェイト総幹事もソマヴィア氏の意見に同意し、「キリスト者として、私たちは『労働』とは私たちに私たちに与えられた賜物や時間を共通の益のために捧げるひとつの方法として差し出されたものであると信じています。多くの人たちが働くところがない状況にある中、私たちはどのように労働が正義と平和に寄与していくべきかを再び強調していく必要性を感じています」と述べた。
ILOとの協働を通じ、WCCでは世界加盟諸教会に労働者の置かれる環境と市場に関する公正な価値観についてそれぞれの教会の考えを表明することを奨励している。今回発表された政策はブラジルで2006年に行われた第9回WCC総会で方針が発表された、WCCが推進してきた国際問題に対処する教会の超教派国際協力のための政策(AGAPE政策)の一環としてなされるものであるという。
また同ハンドブックではWCCが長期スパンでILOと共に宗教間対話に取り組んでいくことも書かれている。このことは今後数十年間にわたって品位ある労働と社会的正義というさまざまな伝統をもつ諸宗教が感じる共通の懸念に関して、二つの機関の下に諸宗教者が共に取り組んでいく大きな可能性を示唆している。
ハンドブックは現在英語、アラビア語、フランス語及びスペイン語で利用可能となっている。ハンドブックのダウンロードはWCCホームページまで。