国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本が25日、アムネスティ・インターナショナルとアジア死刑廃止ネットワーク(ADPAN)を代表し、昨年12月25日におこなわれた4人の死刑囚(広島の日高広明さん(44)、大阪の福岡道雄さん(64)、東京の秋山芳光さん(77)、藤波芳夫さん(75))に対する死刑執行について懸念を表明し、長勢法務大臣に死刑制度の廃止を要請する嘆願書を提出した。
アムネスティ側は、昨年の死刑執行は「世界的な人権擁護にそむく歩み」であり、「死刑制度の廃止という国際的な流れ」に逆行する行為だと非難。政府に対して死刑制度の撤廃や死刑判決の減刑、さらに死刑制度の廃止に至るまで死刑の執行を停止することや死刑の適用に関する情報の開示などを要請した。
アムネスティによる報告によると、国連加盟国193カ国のうち2006年中に処刑を行った国はわずか20カ国。カンボジア、ネパール、フィリピンなどはすでに死刑制度を廃止している。また韓国や台湾なども死刑制度の廃止を積極的に検討している最中だという。
また「日本の約8割の国民が死刑制度の存置に異論がないとしている」という長勢法務大臣の主張に対してアムネスティ側は、「一般の人々が死刑を支持するのは、犯罪をなくしたいという期待と死刑執行が殺人を抑止するという誤った考え方に大幅に依拠しているからである」と反論。死刑制度の存在が犯罪や殺人事件の防止には必ずしも結びつかないことを実例をあげて説明し、人権を尊重した法律の策定を政府に求めた。
アムネスティ側は嘆願書の最後に「暴力的な犯罪の犠牲者やその遺族への同情をいかなる形でも減じない」と述べ、暴力的な犯罪の撲滅に向けて被害者の支援や援助などの社会的な取り組みの必要性について訴えかけた。