学校法人ルーテル学院が24日、神学生寮設置のためのチャリティーコンサート」をルーテル市ヶ谷センターで開催した。同ホールに設置されたフランス・オーベルタン社製の13ストップパイプオルガンを湯口依子(日本福音ルーテル市ヶ谷教会オルガニスト)氏が演奏。若々しく柔らかな音色で奏でる全10曲に200人を超える観衆が聞き入った。
このパイプオルガンは1999年9月にベルナール・オーベルタン(オルガン製作家)により設置されたもの。市ヶ谷教会の渡辺純幸師が自らドイツ、オランダ、ベルギー、フランスを訪問、各地で製品や工房を見て周り、湯口氏ら専門家の意見を参考にして同社のパイプオルガンを購入した。
パイプオルガンはその場の環境に馴染むまで時間がかかる。パイプを立てる穴には、風が漏れないためのパッキングとして薄い鹿皮が張ってあり、パイプを震わせて演奏を繰り返すことで皮が馴染み、使い込むことによって響きに深みが出てくる。
「これはまだ若いパイプオルガンです。まだ生まれてもいないかもしれません」と設置してから8年目のパイプオルガンについて渡辺師が説明した。「ホール内の温度、湿度の中で木が呼吸し、時間と共に会場と一体となって音を響かせるのです」。
パイプオルガンには手で弾く鍵盤と、足で弾く鍵盤があり、演奏には両手両足を使用する。弦を叩いて奏でるピアノと違い、パイプに空気を送ることで音を出すパイプオルガンの響きは、管楽器に近い。余韻が無く、鍵盤から指を離すと音が止まる。
この日演奏されたのは「前奏曲とフーガ ト短調:D.ブクステフーデ」、「いと高きにある神のみ栄光あれ:J.Sバッハ」、「神のみわざはよきかな:J.Pケルナー」など全10曲。湯口氏が演奏する「教会ソナタ・ハ長調:W.Aモーツァルト」では、足鍵盤を弾く左右の足がリズミカルにステップを踏む。体をひねりながら、流れるように鍵盤の上を足が踊り、はねる様な手の動きと共に、喜びをもって賛美歌をささげる様を表現する。
「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け:J.Sバッハ」では、演奏途中、まるで突然名前を呼ばれてハッとするように音が止まり、またすぐに音色が奏でられるという、印象的な「間」がある。人生の中で突然真理に気づかされるような強い響きが、無音の静寂の中に聞こえてくる。
「協奏曲ヘ長調:Ch.Hリンク」では、絶え間なくまっすぐに、育てるように音をつむぎ出し、決してとまらない歩みを思わせる。指揮をするかのようにオルガンから音を引き出す湯口氏は、パイプの一つひとつの声に耳を傾けるように、鍵盤による音とのふれあいを楽しむように演奏した。
渡辺師は「オルガンは400〜500年生き続ける。神学生寮の設置も同じ。いま、やっていることが後にどうなるかが大切です」と、福音を伝え広めるために牧師を育てる環境を整えることの重要性を説明した。そのうえで、渡辺師は「この市ヶ谷センターのオルガンに使われているパイプは全部で779本です。一本がかけても音楽を奏でることができません。会場のみなさん、協力してくださる一人ひとりが大切です。これから始まる2年間、さらなる神様の祝福を求めたいです」と、協力する一人の尊さを伝えた。