トルコ南東部の都市マラティヤで18日、聖書の出版会社が襲われ、社員3人が殺害された事件を受けて、世界福音同盟(WEA)の信教の自由委員会のジアン・キャンデリン委員長が20日、現地を訪問した。
殺害されたのはトルコ人のネカティ・エディン氏とウガー・ユキセル氏、ドイツ人のティルマン・エッカート・ゲスキー氏。3人は出版社の事務所内で手足をしばられ、首を刃物で切りつけられ殺害された。地元警察は現在、事件に関与した疑いで10人を拘束している。
キャンデリン委員長は犠牲者の遺族を慰め、精神的な支えを与えるためにトルコを訪れたが、キリスト教徒3人が無残な方法で殺されたことを受けて、「犠牲者の家族のために、(トルコで)少数派のクリスチャンが守られるように、トルコのために、すべてのキリスト教徒が祈ることを願う」と伝えた。また、「今トルコは非常に危険な事態にある」と、大統領選挙戦を前に、国民の大半を閉めるイスラム教徒とナショナリストの間で緊張が高まっている現地の状況を伝えた。
殺害された3人は、マラティヤ・カルタラス教会の一員で、世界キリスト教連帯(CSW)の情報によれば、事件は以前から聖書出版社に対して脅迫を行なっていた右翼系のイスラム過激派によるものではないかと見られている。
世界キリスト教連帯のスチュアート・ウィンザー国内ディレクターは、「トルコでこのような残忍な方法で3人が殺害されたことを聞き、非常に悲しい。今、我々の心と祈りは彼らの遺族に向けられている。」と述べた。
また、「この事件により、トルコで少数派に対する強硬な勢力が力を増していることが明らかになった。当局がいち早く犯人を司法の場に引き渡し、トルコで少数民族や、少数派の宗教を暴力によって脅している過激派の増加を収めることを願っている」と、過激派の取り締まり強化を求めた。
世界福音同盟のジェフ・タニクリフ国際ディレクターは、事件に対して哀悼の意を表し、「我々はトルコのキリスト教徒に対するこのような暴力を非難する。我々は、このような残忍な方法によらずに、対立を解決する方法を探すべきだ。政府や地元のキリスト教界、教会の指導者らは理解と和解をもたらす、互いに尊重し合える環境をつくる責任がある」と、相互理解を深め、暴力によらない解決を求めた。
イスラム多数派のスンナ派が大半を占めるが世俗主義を国是とするトルコでは、昨年から政治的緊張が続いている。現在、来月16日にセゼル現大統領の任期が切れることに伴って行なわれる大統領選挙戦を前にしてより緊張が高まっており、昨年にはカトリックの司祭が殺され、今年初めにはアルメニア系トルコ人編集者のフラント・ディンク氏が、青年ナショナリストに射殺されている。