私財を投じて50年にわたりホームレスの救済に生涯を費やしたフランスのピエール神父(本名アンリアントワンヌ・グルエ)が22日朝、パリ市内の病院で死去した。94歳。
肺感染症のため14日から入院していたという。シラク仏大統領が22日、発表した。シラク大統領は、「フランスは善な良心を自ら身をもって実践してきた偉大な人物を失った」と追悼した。
ドミニク・ドビルパン仏外相は、「貧困とホームレスの問題に関心を呼び集め、自ら大きな献身と感動を示した彼をすべてのフランス国民は恋しがるだろう」と語った。
1912年、仏中部リヨンで裕福な生糸商人の5番目の子供として生まれたが、カトリック教会のために財産を放棄。第2次世界大戦中はレジスタンスとともに闘い、49年、自らの資金で慈善団体「エマウス」を設立した。エマウスはホームレスや貧しい人々に衣食住を提供、仏国内だけでなく、世界38か国に拠点を広げた。
世論調査の「フランスで最も好ましい人物」でトップの座を占めていた神父の死去の報が伝えられた22日朝から、神父が入院していたパリ市内のヴァル・ドグラス病院前やパリ19区の「ピエール神父基金」本部、生地の仏中部リヨン市内の教会をはじめ仏各地の教会には一般市民やホームレス、人道団体などが哀悼の意を表するために続々と集まり、神父の偉業をしのんだ。