教会音楽の権威として著名だった中田羽後牧師(1896−1974)による邦訳メサイアを歌うコンサート(日本イエス・キリスト教団・荻窪栄光教会主催)が16日夜、東京の杉並公会堂大ホールで開かれた。同教会聖歌隊50人とプロの演奏者らが、松井眞之氏(国立音楽大講師)の指揮のもと、1000人の聴衆の前で荘厳な調べを披露した。
コンサートは3部構成で、救世主(=メサイア、イエス・キリスト)の出現の預言と成就、救世主の受難・復活・昇天・福音の伝播、信者の復活の約束と救世主の即位――と続く。荻窪栄光教会主管牧師・中島秀一師によるショートメッセージが冒頭であり、クリスマスがイエス・キリストの生誕を祝う日であることを伝えた。さらにその生涯の中心部分である十字架と復活は、単なる過去の事実を伝えることに終わらず、過去の自己中心的な自分に死んで、新しい他者中心的な自分に生きるというところに、現代人に対する現代的なメッセージが存在することを強調した。
中田牧師と共同牧会をした森山諭牧師(1908−96)の超教派伝道の精神を継承してケズイック大会、再臨待望大会、バックストン聖大会などの主要聖会で演奏経験を積んでいることもあり、本番に合わせて4カ月の間に「プロのレベル」(来場者)に仕上げてきた聖歌隊。演奏終了時、聖歌隊の最後の1人が退場するまで大きな拍手が送られていた。
中島秀一牧師は本紙の取材に対し「教会員が大きな犠牲を払って日曜日の他に週一度の厳しい練習を欠かさず続けた。(森山、中田両牧師の)意志を継いで皆が一生懸命によくやった」とねぎらいの言葉を贈ったうえで、「荻窪栄光教会が一つとなっていることの証として毎年公演を続けたい。効率的なことを先に考えないで、宣教の底辺を広げていきたい」と決意を表明した。
荻窪栄光教会は新聞の折り込み広告やダイレクトメール以外に、読売と毎日の一般紙に広告を出すと共に、朝日マリオンの無料記事枠を活用して地元市民に公演や教会活動をアピールした。
公演は入場無料だが、特定非営利活動法人であるワールド・ビジョン・ジャパン(東京・新宿区)と協力して、会場にクリスマス緊急食料支援募金箱を置き、寄せられた善意は同機関を通じて世界の栄養不良の子どもたちの食糧支援に役立てられる。
荻窪栄光教会(杉並区南荻窪4−6−11)のメサイア公演は、1968年から毎年、同教会聖歌隊とプロの演奏家らの協力を得て開かれ、今回が39回目。公演は32回までは教会礼拝堂で行われたが、地元住民の間でクリスマスシーズンの風物詩として定着し、武蔵野市民文化会館小ホール、今回の杉並公会堂と年々その規模を広げている。
同教会聖歌隊はクラシック音楽の町として知られる荻窪で春と秋に開かれる音楽祭のメンバーであるが、40回目となる07年のメサイア公演は、音楽祭実行委員会から演奏依頼があり11月中旬に、これまで以上に多くの市民を招いて同会場で開かれる予定だ。