米人権団体フリーダムハウスエグゼクティブ・ディレクターのデイヴィッド・クレーメル氏は、エジプトにおける11日のムバラク大統領辞任の発表を受け、反政府運動を行ったエジプト国民らに「18日間における力強く忍耐強い運動」を行い続けたことを称賛するメッセージを発信し、エジプトが民主主義改革の第一歩を踏み出したことを祝福した。同国スレイマン副大統領は、11日のムバラク大統領辞任の発表を国営放送で行った。
エジプト人のノーベル平和賞受賞者であるモハメド・エルバラダイ元国際原子力機関(IAEA)事務局長はエジプトでの大統領辞任の動きを称賛し「エジプトが解放された」と述べた。
一方、米カリフォルニア州サンタアナに本部を置くキリスト教の抑圧監視団体「オープン・ドアーズ」プレジデント兼CEOのカール・モエラー博士は、エジプト国内に存在する1,000万人のキリスト教徒の将来を憂慮し、「最近の世論調査から、次期選挙が行われた際のエジプト政権では、イスラム過激派が主要な役割を果たす可能性が大きい」と指摘する。その場合、同国で少数派であるキリスト教徒への迫害は現在より激しくなることが予測されるという。
モエラー博士は、ピュー・リサーチ・センターによるエジプト国内のイスラム教徒のうち84%がイスラム教を棄教した者への死刑判決を肯定しているという調査結果が出ていること、またイスラム教徒の95%がイスラム教が政権において主要な役割を果たすことを肯定していることへも懸念を表明した。調査結果によると、エジプト国内の大半のイスラム教徒は同国近代化の道筋とイスラムファンダメンタリストの動きの間に衝突が生じるとは考えていないという。
米政策学者の間でも、ムバラク大統領辞任によって、エジプトがイスラム過激派の思想に支配されることを懸念する声が高まっている。米フロリダ州共和党下院議員のイレーナ・ロス=レーティネン氏は11日のムバラク大統領の辞任発表を受け、「我々はムスリム・ブラザーフッドやその他イスラム過激派が政権を握る道を否定するための一致した声を発していかなければならない。イスラム過激派による政権はエジプト国民を抑圧し、エジプトと米国・イスラエルその他民主主義国との関係を悪化させる」と述べている。
オバマ米大統領は「これ(ムバラク大統領の辞任)がエジプトの政権移行の終焉ではない。始まりにすぎない。この先多くの難題が積み重なっていることは認める。しかしここ数週間の一致したエジプト国民の動きを見て、同国民が難題に対する答えを見つけ出し、平和的・建設的に歩んでいくことを信じている」と述べた。オバマ米大統領は今後のエジプト政権に対して、公正でオープンな選挙によって大統領を選出し、同国憲法がより民主的な内容に修正されるべくエジプト軍最高首脳会議に呼びかけている。
米キリスト教指導者たちはエジプトの今後の不透明感を表明している。モエラー博士は「エジプト国内にある教会、キリスト教徒たちを覚えて祈る必要がある。彼らの希望はイエスキリストの主権にある。しかし現実にはエジプト国内の私たちの兄弟姉妹は将来に対する大きな不透明感に直面している」と述べ、エジプトの政権移行期に当たる現在において、祈りが一番の武器となるとし、キリスト教徒らに祈りを呼び掛けている。
オープン・ドアーズによると、エジプトはキリスト教を迫害する50か国のリストの中で第19番目に位置づけられている。