【CJC=東京】米紙ニューヨーク・タイムズは7月1日付けで、バチカン(ローマ教皇庁)が米国の修道女の実態について調査を始めている、と報じた。異端審問の対象とされるのではないか、と驚き、戸惑いが広がっているという。同紙は『イエズスの聖心の使徒』会の総長メアリー・クレア・ミレア修道女が女子修道会の調査をするよう任命された、と報じた。
修道女は米国でもカトリック教会形成の陰の働き手。学校や病院を開設し、小教区(各個教会)を活気付ける存在。ただその数は1965年の18万人から今では6万人にまで減少している。
今回の調査を、バチカンが米国の教勢減退に注意を払ってのこと、と歓迎する向きもあるが、現代社会に対する自らの召し理解を締め直そうとするのが狙いではないか、との懸念が広がっている。
第2バチカン公会議以後、修道女の中には制服着用を止め、修道院を出て自活したり、学界などで専門職に就いたり、特定の社会・政治運動、貧困者への奉仕団体、霊性推進団体などに関係する人も出ている。中には、女性や既婚者の聖職叙階など教会改革を目指す組織で活動する人もいる。
今回の調査は「使徒的訪問」と呼ばれるが、バチカンは女子修道会の運営の質を調査するという説明に留まっている。2011年半までに340修道会の実態と改善提案をクレア修道女は提案する予定で、すでに127修道会の総長と1対1で会談したという。
調査は、教皇庁奉献・使徒的生活会省長官のフランク・ロデ枢機卿が指示した。同枢機卿は昨年、米国の修道女の中に、教会から離れた道を選んだものがいる、と非難していた。
「使徒的訪問」は重大な逸脱行為があると判断された時に行われている。性的虐待がらみで米国の神学校、創設者の性的非行や金銭上の問題で修道会『レジョナリーズ・オブ・クライスト』などがその例だが、米国の修道女を対象にしたことには驚きの声が上がっている、とタイムズ紙は報じた。
カリフォルニア州バークリーのイエズス会神学校で新約聖書と霊性を講じていたサンドラ・M・シュナイダーズ修道女は、バチカンが修道女を「教会の労働力と捉えている」と見ている。同氏は調査に協力しないよう友人に訴えた。初めは電子メールで少数への要請だったが、すぐに複写、流布され公開の形となった。