妊娠後期の中絶手術を行うことで知られていた産婦人科医のジョージ・ティラー氏(67)が、米中西部カンザス州の教会で31日、日曜礼拝が始まってすぐの午前10時過ぎに教会に侵入してきた男に銃で頭を撃たれて死亡した。男は車で逃亡したが、約3時間後に身柄を拘束された。
現場となった教会は同州最大のウィチタにあるレフォメーション・ルーテル教会。AP通信などによれば、男は同州カンザスシティー在住のスコット・ローダー容疑者(51)で、犯人の車の目撃情報などを元に警察が容疑者として拘束した。犯行の動機は今のところ不明。
米メディアが伝えたところによると、ティラー氏は同日、教会の案内係を務めていたところを襲われ、教会の入口付近で倒れているところを発見された。
ティラー氏は、胎児に異常がある場合などは妊娠21週過ぎの女性にも中絶できる権利があると主張し、妊娠後期の中絶手術を行う米国でも数少ない医師の1人であった。同州では、複数の医師の合意などを条件として妊娠中絶が認められているが、道徳的に反発が強く、同氏はこれまでも中絶反対派から激しく批難されていたという。
オバマ米大統領は同日、「ショックで怒りを覚える」と事件を強く批難。「中絶のような難しい問題をめぐり国民の溝がいかに深いとしても、暴力という凶悪な手段で解決することはできない」とする声明を発表した。
また、ホルダー司法長官も事件を受けて、連邦裁判所の執行官らに対し、中絶反対派の標的になる可能性がある人々や施設を保護するよう指示した。