マザー・テレサという一人のクリスチャンは、ある時「私たちはこの世では大きいことはできません。小さなことを大きな愛をもってするだけです」と言いました。
私たちは、大きなことをしようと雄大な計画を立てたり、夢を描くことがあると思いますが、そればかりに気を取られていますと、たった今、小さなことをするチャンスが失われてしまうことがあります。
ある一人の知り合いは、「私はもっと色々なことをして、人の役に立ちたい。しかし、残念だけど今は何もできない。いつか自分が成功して、お金があり、与えるものがたくさんあるようになったら是非したい。」そして繰り返し、「今の自分には何もできない」と話していました。
しかしその間に、多くの助けを必要としている人がいます。ひとことの優しい言葉をかけられたい寂しい人たちに、優しく声をかけ、目が不自由で、恐る恐る歩いている人の手を握ってあげたり、道にごみが無造作に捨ててあるのを、拾ってごみ箱に捨てたり、また、家族の中に、あなたの助けを必要としている人がいるのではないでしょうか?
マザー・テレサは、世界を変えることが出来なくても、自分の身の回りの人に手をさし伸ばし、少し暮らしやすくしたり、その町を少し明るくすることを実践していました。それは小さな親切の積み重ねでしたが、結果としては、世界に影響を与えました。しかし、これは結果に過ぎません。
ある偉大な神の器が、若き日に世界を変えるという夢を描いていました。しかし、年が経つにつれて、「それは難しい。せめて自分の国だけでも。」と思うようになり、今度は、「せめて、自分の住んでる地域だけでも。」と思うようになり、もう少し年を重ねて、「せめて、自分の家族だけでも。」と思いましたが、晩年には、それも難しく、「せめて、自分だけ変えることができたら。」と思うようになりました。しかし、自分が変わったら、家族が変わり、家族が変わったら、地域が変わり、それがやがて国を変え、国々に影響を与えるのだと気づきました。そして、「このことにもっと早く気づいていればなー。」と深く溜息をついたそうです。もちろん、人生の晩年であっても遅すぎることはありません。
大切なのは、自分を変えることではないでしょうか? 今できる小さな親切を無価値なものと思ったり、損得勘定で計算したり、めんどくさがったり、正当な言い訳を考え出して何もしていなかった自分を変えて、小さなこと。しかし、それに、大きな愛を込めてすること。しかし、そのことを喜ぶ人がいるし、一生忘れない人もいるかも知れません。少しだけかも知れませんが、その場所を明るくできるかも知れませ。あるいは、世界に影響を及ぼすことができるかも知れません。どうぞはじめてみて下さい。
◇菅野 直基(かんの なおき)=新宿福興教会牧師
リンク:新宿福興教会ホームページへ