(※安全のため、登場する人物の名前や地名は架空のものに変えてあります。)
ファイザは、ある牧師が開いた弟子作りと開拓のセミナーについて聞いたとき、これこそ自分が待ち望んでいたものだと即座に感じた。イスラム教を信仰していたファイザが主イエスを信じたのは、その時からわずか2年前のことだった。彼女はとりなし祈るのが大好きで、何時間でも祈り続けることができた。
向学心の旺盛なファイザだったが、自分が望むような教育を受ける機会には恵まれなかった。それでも勘の良い彼女は、商売の鋭い感覚を身に付けることはできた。彼女は市場で他のパーム油商人たちを簡単に出し抜いたのだ。彼女は商品を見極め、競合他者を見極め、シンプルな付加価値を提供し、顧客との信頼を勝ち取る方法を知っていた。
学はなくとも商才に恵まれていた彼女は、この町を離れたいと思ったことは一度もなかった。しかし、神の語りかけを聞いたとき、彼女はセミナーを主催するジョゼフ牧師に、弟子訓練のトレーニングに参加したいと告げた。
しかしジョセフは、彼女が読み書きを知らなかったのでちゅうちょした。それでも、主が訓練を受けるようにと言われるのなら来るようにと彼女に告げたのである。
ジョセフが弟子訓練セミナーのために早めに教会に着くと、ファイザはすでに部屋の外で待っており、誰かがドアを開けてくれるのを待っていた。ジョセフはこんなに幸せそうな彼女を見たことがなかった。彼女が祈ったとき、神は大きな励ましを与え、訓練を終えたらどこに遣わされるのかまで教えてくださったのだ。
6週間後、彼女はトレーニングを終えた。訓練を修了したファイザは、自分が行く宣教地がジュムヴルであることをジョセフに告げるのが待ち切れなかった。ついに彼女がそれをジョゼフ牧師に告げると、彼は「なんだって?」と驚いた様子で、目に涙を浮かべてファイザに懇願した。「そこに行ってはだめだ!殺されるぞ!」
しかし、自分の召しを確信していたファイザはこう答えた。「神がお導きになるのですから、主は行ってはいけない場所に私を導かれることはないでしょう」(続く)
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