マーティン・スコセッシ監督が、イエス・キリストの生涯を描く新作に、映画「沈黙―サイレンス―」(2016年)で主演を演じた俳優アンドリュー・ガーフィールド(40)を再び起用することを考えているという。
米エンタメ誌「バラエティー」(英語)によると、スコセッシ監督は、遠藤周作の小説『イエスの生涯』(1973年)を原作とする新作で、ガーフィールドの起用を検討しているという。ただし、ガーフィールドがイエスを演じるのか、弟子の一人を演じるのか、それとも別の人物を演じるのかは明らかではない。
スコセッシ監督とガーフィールドは、同じく遠藤周作の小説『沈黙』(66年)を原作とする映画「沈黙―サイレンス―」で初めてタッグを組んだ。ガーフィールドはこの際、師と仰ぐフェレイラ神父の棄教のうわさを確かめるため、日本にやって来たイエズス会の若き宣教師ロドリゴ神父を演じた。
米キリスト教系文化メディア「リラバント」との2017年のインタビュー(英語)で、ガーフィールドはこの役を演じるために、聖書を学んだり、司祭と会ったりしたりするなど、どのように役作りをしたかを詳述。その上で、次のように語っていた。
「実に簡単だったことは、この人、つまりイエス・キリストと恋に落ちることでした。それが一番の驚きでした」
バラエティー誌によると、スコセッシ監督はこの他、「トップガン マーヴェリック」で、マーヴェリックの亡き親友グースの息子ルースターを演じたマイルズ・テラー(37)の起用についても考えているという。ただし、ガーフィールドとテラーが共演するのか、あるいはどちらか一人だけが出演するのかは明らかではない。
新作の撮影は、今年後半にも開始される予定。オンラインメディア「デッドライン」(英語)によると、スコセッシ監督は2月に開かれたベルリン国際映画祭の記者会見で、「(新作については)今、考えているところです」と語っている。
「どのような作品にするかはまだ分かりませんが、何かユニークで違ったものを作りたいと思っています。それは示唆に富み、また楽しませてくれるものとなるでしょう。どうすればいいかは、まだよく分かりません」
ガーフィールドは22年、米月刊誌「バニティーフェア」(英語)に対し、自身は信仰や精神的なものを扱った映画に引かれるとし、次のように話している。
「私は信仰や精神性の問題、そして精神的生活の神秘に最も引かれます。もし私が俳優でなかったら、神学的な学びをしていたと思います。(脚本家の)ダスティン(・ランス・ブラック)の脚色はまさにそれに当てはまります。彼は、研究と状況を提示し、原理主義と過激主義についての考え、また、それらが信仰を持つことから得られる美徳と善をどのように損なうかを解き明かしています」
一方、ガーフィールドは16年、何を信じるべきかについては、ほとんど「混乱している」とし、米エンタメ誌「ハリウッドレポーター」(英語)に次のように話している。
「私はキリスト教徒ではありません。私は汎神論者であり、不可知論者であり、時には無神論者であり、少しユダヤ教徒です。しかし、大抵は混乱しています」
映画誌「コライダー」との22年のインタビュー(英語)では、信仰の物語を持つ人物を演じる動機は、生と死への憧れから来ていると語っている。ガーフィールドにとっては「生と死が全て」であり、この世にいることの有限性と突然の死こそが、彼の興味をそそるという。
「それは私にとっては、限りなく興味深い、とても肥沃(ひよく)な土地なのです。精神性や信仰を扱うなら、生と死を扱うことになります。何がより重要なのでしょうか。何がより大きな問いなのでしょうか」