※安全のため国名不詳、仮名とする。
タヘル兄弟は、中東で最も迫害の強い国の一つに住んでいる改宗者だ。彼は、伝道したことが当局に知られ、懲役刑か、もっとひどい目に遭う危機にあった。しかし、神がこれに介入されたのだ。
タヘルは「求めよ、探せ、たたけ、さらば与えられん」と、マタイ7章7節から引用して、独房の冷たい壁に書いた。彼は、尋問が終わると、ポケットにそっとペンを忍ばせた。次に独房に入る者への励みになればと思い、壁にメッセージを残したのだ。
数日前、突然秘密警察が家に押し入り、彼らは妻や子どもたちの前でタヘルに手錠をかけ、彼を連行していった。しかしタヘルはその時、主イエスの臨在を強く感じていた。
警察は、毎晩深夜0時から4時の尋問に加え、一日中さまざまな時間に、前触れなく尋問を繰り返しタヘルを疲弊させた。「他の信者と会う方法を吐け!」 「どんな歌を歌うのか!」「組織はどうなっているのか!」「知っている信者の名前を全部書け!」という具合に、容赦のない追求が続いた。
ところが裁判になると、不思議なことが起きて、彼は釈放されることになる。裁判官は、伝道活動をやめることを条件に釈放を持ち出した。
彼は当時を振り返り「私は、私に対する主のご計画に信頼していましたので、法廷では平安でした。裁判官が下すどんな判決も受け入れるつもりでした。ところが、裁判官はこう言ったのです。『なぜだか分からないが君をクジラとライオンの口から引き出したいのだ』。裁判官の口から『クジラ』『ライオン』と聞くとは思いもしませんでした。それらはダニエルとヨナの物語に出てきます。とても不思議でした。あの時、神が働いておられたのです」と述べた。
彼は出所したが、次の逮捕は即懲役を意味する。彼と妻は一緒に祈り、主に強められ、最後までこの道に歩むと決意した。
彼は伝道を続けたが、彼と家族を秘密警察がどこまでも追ってくるようになり、仕事もできず、職も失い嫌がらせは極限に達した。もはや日常的な生活の継続が困難になると、彼と家族はやむなく国を出る決意をした。
現在彼らは、第三国で難民として暮らしている。祖国を離れる悲しみにもかかわらず、タヘルは次のように述べる。「神は私の父で、父は私から何も取り上げませんでした。しかし私の全ては主のものです。これを思い出すとき、失う恐れは消えるのです」
困難と戦いながら、イスラム世界で伝道するタヘルのような兄姉たちが守られて、いつの日にか、大きな大収穫を得ることができるように祈っていただきたい。